講義No.11843 医療技術

生活を向上させる人工の手「義手」の現在の課題は?

生活を向上させる人工の手「義手」の現在の課題は?

義手にもさまざまな種類がある

世の中には事故や病気などの理由で片手を失った方がいます。日常的な動作の80%は片手のみで行うことが可能であると言われていますが、仕事や勉強、スポーツなどの中には、どうしても片手では難しい活動があります。その際に必要となるのが人工的につくられた手、「義手」です。義手にはさまざまな種類があり、外観はともかくものを持ち上げるなど特定の作業をしやすくする「作業用義手」、見た目が本来の手に近い「装飾用義手」、体に取りつけたハーネスで指を動かす「能動義手」、モーター等外部の力によって動かす「動力義手」の4つに大別できます。

義手選びに重要なポイント

上肢切断者は医療チームと相談しつつ、これらの中から対象者の目的に適した義手を選択します。義手選びの重要なポイントの1つが対象者と義手とのマッチングです。義手は種類によってできることが異なる上、作業用義手は見た目がよくない、装飾用義手は手先を能動的に動かせない、能動義手はハーネスによる肩こりがあるなどのデメリットもあります。そこで作業療法士は、さまざまな義手の特徴を把握した上で対象者の希望に合う義手を選択していきます。この時重要なことは、対象者にできるだけ義手の実物を見てもらうこと、可能ならビデオや体験用の義手を使って義手の操作場面を見てもらうことも重要です。

シミュレーションで現在の課題を分析

そこで現在、体験用の義手を使って日常生活活動のシミュレーションが行われています。既述の通り、日常的な動作の80%は片手のみで行うことが可能であると言われていますが、何が80%で何が20%かはよくわかっていないのです。また日常生活活動において、義手を用いない健側での片手作業の方がスピードや、安全性や生産性(品質の良さ)に優れているのかといったことが明らかになることが期待されています。今後シミュレーションによって義手の課題が明らかになれば、よりよい義手の開発にもつなげることができるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

関西医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 教授 福井 信佳 先生

関西医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 教授 福井 信佳 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

作業療法学、義肢装具学、日常生活活動学

先生が目指すSDGs

メッセージ

本学の作業療法学科では、将来作業療法士として活躍する人材を育成しています。作業療法士は医療専門職です。ケガや病気によって失われた対象者の機能を再獲得させ、その再獲得した機能を活用してその人らしい生活につなげることができるように手助けします。対象者の「今困っていること」「今後どうなりたいか」といったことを聴き取ることはとても大切なことです。コミュニケーション能力の高い人、特に聴き上手な人に作業療法士という仕事が向いているのではないかと思います。あなたも作業療法士をめざしてみませんか。

先生への質問

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関西医科大学に関心を持ったあなたは

関西医科大学は大阪府枚方市に位置し、医学部・看護学部・リハビリテーション学部(理学療法学科、作業療法学科)を有する医療系複合大学です。急性期医療から在宅医療まで揃う附属医療機関を擁する強みを活かし、医療現場の実情に即したチーム医療を学修。3学部合同授業を通して各職種の役割を尊重・理解することで幅広い視野をもつ学生を育成します。
学内には最新の医療現場に対応した演習設備や機器も充実。臨床現場の実践に近い環境下で繰り返し演習することで、確かな技術はもちろん、状況に応じた判断力・対応力を養います。