生活を向上させる人工の手「義手」の現在の課題は?
義手にもさまざまな種類がある
世の中には事故や病気などの理由で片手を失った方がいます。日常的な動作の80%は片手のみで行うことが可能であると言われていますが、仕事や勉強、スポーツなどの中には、どうしても片手では難しい活動があります。その際に必要となるのが人工的につくられた手、「義手」です。義手にはさまざまな種類があり、外観はともかくものを持ち上げるなど特定の作業をしやすくする「作業用義手」、見た目が本来の手に近い「装飾用義手」、体に取りつけたハーネスで指を動かす「能動義手」、モーター等外部の力によって動かす「動力義手」の4つに大別できます。
義手選びに重要なポイント
上肢切断者は医療チームと相談しつつ、これらの中から対象者の目的に適した義手を選択します。義手選びの重要なポイントの1つが対象者と義手とのマッチングです。義手は種類によってできることが異なる上、作業用義手は見た目がよくない、装飾用義手は手先を能動的に動かせない、能動義手はハーネスによる肩こりがあるなどのデメリットもあります。そこで作業療法士は、さまざまな義手の特徴を把握した上で対象者の希望に合う義手を選択していきます。この時重要なことは、対象者にできるだけ義手の実物を見てもらうこと、可能ならビデオや体験用の義手を使って義手の操作場面を見てもらうことも重要です。
シミュレーションで現在の課題を分析
そこで現在、体験用の義手を使って日常生活活動のシミュレーションが行われています。既述の通り、日常的な動作の80%は片手のみで行うことが可能であると言われていますが、何が80%で何が20%かはよくわかっていないのです。また日常生活活動において、義手を用いない健側での片手作業の方がスピードや、安全性や生産性(品質の良さ)に優れているのかといったことが明らかになることが期待されています。今後シミュレーションによって義手の課題が明らかになれば、よりよい義手の開発にもつなげることができるでしょう。
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関西医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 教授 福井 信佳 先生
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