研究で得られたスポーツのデータを「現場」に生かすために

研究で得られたスポーツのデータを「現場」に生かすために

スポーツとデータ

部活動やスポーツクラブの活動では、選手の動きをさまざまに測定しています。例えば50mを何秒で走れるのか、垂直飛びは何cm飛ぶことができるのかを測定することで、その選手の身体能力がわかります。しかし、こうして得られたデータをどのように分析し、今後の指導・トレーニングに活用すれば良いのかを、正しく理解している指導者は多いとはいえません。ある選手が大きなポテンシャルを秘めていることを示すデータが得られても、そこを見逃してしまい、自分の経験則に沿って選手の指導や評価が行われていることもあるのです。

現場と研究のギャップ

一方、スポーツにおけるデータ収集は、大学などの研究機関でも行われています。例えば被験者の身体にさまざまな計測機器を取り付け、飛ぶ・走るといった動作をさせることで、筋肉のどの部位がどれぐらい収縮し、どれぐらいの力を生んだのかといった詳細なデータがわかります。こうした動作解析データは、学術論文などで発表されることもありますが、運動や身体についての専門的知識がなければ理解することが難しく、部活動やスポーツクラブといったスポーツの「現場」にすぐに還元されるものではありません。このように「研究」と「現場」とにギャップがある点が、スポーツ科学の課題であるといえます。

スポーツ科学の力を還元する

テクノロジーが進化した現在、例えば動画データから選手の詳細な動作解析ができるようになるなど、「現場」でも「研究」レベルのデータ収集が可能になりつつあります。しかし、アメリカに比べると日本はこの分野では後れを取っています。解析したデータを正しく分析・活用するには、現場の指導者だけでなく、専門家の力が欠かせません。スポーツ科学の研究成果をよりわかりやすい形で表現し、現場にダイレクトに提供するような仕組みをつくることは、競技指導だけでなく、運動嫌いの克服、健康の維持など、スポーツが関わる幅広い分野への貢献が期待できるのです。

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関西医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 助教 田頭 悟志 先生

関西医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 助教 田頭 悟志 先生

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スポーツ科学

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メッセージ

ほとんどの高校生にとって、スポーツは「する」対象だと思いますが、スポーツの関わり方は実に多種多様です。例えば関連する仕事には、メディアやスポーツ用品、イベント、観戦、心身のケアなどがあります。またプレイヤーにも、遊びの延長、健康維持のため、真剣に勝敗を追求するなど、さまざまな関わり方があります。今の時点で関わっていない人にとっても、この先の人生の中で、どこかで接点が生まれることも考えられます。ぜひスポーツがもつ多様な力、可能性を知ってもらいたいです。

関西医科大学に関心を持ったあなたは

関西医科大学は大阪府枚方市に位置し、医学部・看護学部・リハビリテーション学部(理学療法学科、作業療法学科)を有する医療系複合大学です。急性期医療から在宅医療まで揃う附属医療機関を擁する強みを活かし、医療現場の実情に即したチーム医療を学修。3学部合同授業を通して各職種の役割を尊重・理解することで幅広い視野をもつ学生を育成します。
学内には最新の医療現場に対応した演習設備や機器も充実。臨床現場の実践に近い環境下で繰り返し演習することで、確かな技術はもちろん、状況に応じた判断力・対応力を養います。