心不全の悪化を遅らせ、生活の質を保つ心臓リハビリテーション
心不全パンデミックがやってくる?
心不全を患う高齢者が増えています。心不全は、心臓の機能が悪くなることで息切れや体のむくみ、易疲労感などの症状が現れ、最終的には死に至る症状です。心臓を動かすためのさまざまな身体機能は加齢により衰えてくるため、高齢化社会の加速とともに心不全パンデミックへの危機感が高まっています。
これまでの心不全治療は、薬物療法を中心に食事や生活面の指導が行われてきましたが、近年は生活の質(QOL)を保ち、悪化を少しでも遅らせることを目的として、運動療法を加えた心臓リハビリを行うことが推奨されています。
患者の心肺機能に応じた運動プログラム
心臓リハビリでの運動療法は有酸素運動が基本です。「心臓が悪いのに運動していいの?」と疑問に思う人もいるでしょう。確かに以前は安静に過ごすのが当たり前でしたが、今では薬物療法との相加的効果が実証されています。運動には自転車エルゴメーターなどの器具を使用することが多く、事前に心肺運動負荷試験を行って、個々人の心肺機能に応じて負荷の強度を決めていきます。ペースメーカーを装着していた70代の女性は日常生活に支障をきたすまで心肺機能が低下していましたが、4カ月間の心臓リハビリにより、息切れを自覚することがなくなりました。
心臓リハビリの認知を広め、地域格差の解消を
脳血管疾患や整形外科の外科的治療にはリハビリが必ずセットになっていますが、心臓リハビリが広く注目されるようになってからはまだ日が浅く、認知度は低いのが現状です。きちんとした診断を受けて、心不全が重症化する前に取り組むことで、より心肺機能の改善効果が期待されますが、心臓リハビリを実施できる施設も、専門知識を持つ認定医や指導士も不足しており、地域によって導入の進み具合に差があります。必要としている人が、どこに住んでいても治療を受けられる体制づくりが急がれます。
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