「感じ方」が違う発達障がい児を支援するリハビリテーション
発達障がいの子どもにみられる「感じ方」の違い
「自閉スペクトラム症(ASD)」といった小児期の疾患があります。ASDは対人関係の苦手さ、特定のことに対する強いこだわりなどが特徴ですが、音、光、体の動き、触覚など、感覚の感じ方が人とは異なる子も多くいます(例えば音に敏感で耳をふさいでしまう、明るい場所を過度にまぶしがる、人に触られるのを極端に嫌がる、シャワーを痛く感じる、土や粘土の感触がとても苦手、身体の動きが感じ取り難く運動の不器用さを示すなど)。その様な「感じ方」の違いは、神経や脳における感覚処理の問題が原因だと考えられています。
生活のしづらさを改善するための支援
「感じ方」の違いがあると、日常生活で行動がスムーズにできない、みんなと一緒に遊べない、学習が困難になるなど、家庭や学校での生活に支障をきたすことが少なくありません。そこで作業療法の視点から子どもの「感じ方」を理解し、日常のさまざまな場面で子どもや家族を支援するための取り組みが行われています。作業療法士はまずその子の苦手なこと・得意なことは何か、何に困っていて何が必要かを知るために、本人や家族、先生からも丁寧に聞き取りを行い、子どもの行動観察や検査など実態を客観的に評価する「アセスメント」を実施します。
家族へ、教育現場へと広がる作業療法
次に苦手や困っていることにどうしたら対処できるかを考え、家庭や学校や地域社会で適応し、より良く生活できる方法を探ります。例えば泥遊びの感覚が嫌いな子には、その子が参加しやすい条件を分析し、使用する素材や環境を段階的に変えたり、スコップなどの道具を使ってみたりと多様な支援を試みます。また、ご家族に対しては食事や着替え、入浴などの子育てがスムーズに行えるような提案や、家族自身の心のケアにも関わります。さらにまだ少数ですが、保育園や幼稚園、学校現場で作業療法士が保育士や教師と協力し、支援を行うケースもあります。作業療法は医療分野だけでなく、教育や福祉の現場でも活躍の場が広がっています。
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先生情報 / 大学情報
関西医科大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 准教授 松島 佳苗 先生
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