講義No.10029 医療技術

より快適な生活のために、筋電義手の普及率アップをめざす

より快適な生活のために、筋電義手の普及率アップをめざす

普及率の低い筋電義手

事故や病気で手を失った人が使う義手の一種に「筋電(きんでん)義手」があります。人間は筋肉を動かすときに脳から命令を送ります。筋電義手は、そのとき発生する微弱な電流である筋電(表面筋電位)を感知して、義手を動かす仕組みです。
欧米では筋電義手が普及し始めていますが、日本における普及率は、義手を必要とする人のわずか2%に過ぎません。前腕を失った患者さんが使う筋電義手の場合、ドイツ製で150万円ほどと、とても高価で、使うのを諦めてしまう人がほとんどなのです。

低価格で見た目も、機能も向上

作業療法学では、失ったものを元通りにすることはできませんが、生活を元の状態、本来あるべき状態に極力近づけることをめざします。作業療法の「作業」とは、食べたり、入浴したり、人の日常生活に関わるすべての諸活動のことを指します。
筋電義手については、3Dプリンタが使えるようになった現在、材料の調達などを工夫すると、6万円程度で試作することができます。安価で製作できるとなれば、気軽に使えますし、色違いで何本か作り、その日の気分でメガネのように着け替えることも可能です。義手にポケットを付ければ、交通系ICカードやスマートフォン、時計を入れることもできます。義手を必要とする人たちが、まるでファッションのように筋電義手を身に着け、街に出るようになったら、義手のイメージも変わるでしょう。

子ども用筋電義手の開発への期待

将来的には子ども用の筋電義手の開発も期待されます。先天的に手首から先が欠損している子どもや、事故で指を失った子どもがいます。筋電義手を戦隊ヒーローのようなデザインにすれば、喜んで着けてくれるかもしれません。筋電義手の普及率を高めることによって、より多くの人が希望を持って人生を進めるよう、より快適に生活が送れるように、手助けができるでしょう。日本における筋電義手の開発はまだ始まったばかりなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生

帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生

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作業療法学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが将来、作業療法士をはじめ医療者をめざすのであれば、学生時代にボランティアやサークル活動などさまざまな経験をしてほしいと思います。それは人に興味・関心のある人が医療者には向いているからで、人が何に困っているのか理解できる人ほど長く続けられる仕事だからです。
一方、よく理系の人がめざす分野だと思われがちですが、患者さんとのやりとりなどでは国語力が必要です。実際に文系の人も多く活躍していますから、理系・文系にとらわれずめざしてほしいです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

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帝京大学 福岡キャンパスは有明海に面した雄大な自然と最新設備が揃ったキャンパスです。理学療法、作業療法、看護、診療放射線、医療技術(救急救命・臨床工学)の5学科を擁する福岡医療技術学部では、現代の高度な医療に欠かせない知識や技術に加え、患者さんや他職種のスタッフへの想像力やコミュニケーション能力といったチーム医療に必要とされる素養を高めながら、大牟田市という歴史ある土地で官民一体となり、各自治体と連携しながらさまざまな取り組みを実施していくことで医療のプロとして地域に貢献できる人材を育成します。