より快適な生活のために、筋電義手の普及率アップをめざす
普及率の低い筋電義手
事故や病気で手を失った人が使う義手の一種に「筋電(きんでん)義手」があります。人間は筋肉を動かすときに脳から命令を送ります。筋電義手は、そのとき発生する微弱な電流である筋電(表面筋電位)を感知して、義手を動かす仕組みです。
欧米では筋電義手が普及し始めていますが、日本における普及率は、義手を必要とする人のわずか2%に過ぎません。前腕を失った患者さんが使う筋電義手の場合、ドイツ製で150万円ほどと、とても高価で、使うのを諦めてしまう人がほとんどなのです。
低価格で見た目も、機能も向上
作業療法学では、失ったものを元通りにすることはできませんが、生活を元の状態、本来あるべき状態に極力近づけることをめざします。作業療法の「作業」とは、食べたり、入浴したり、人の日常生活に関わるすべての諸活動のことを指します。
筋電義手については、3Dプリンタが使えるようになった現在、材料の調達などを工夫すると、6万円程度で試作することができます。安価で製作できるとなれば、気軽に使えますし、色違いで何本か作り、その日の気分でメガネのように着け替えることも可能です。義手にポケットを付ければ、交通系ICカードやスマートフォン、時計を入れることもできます。義手を必要とする人たちが、まるでファッションのように筋電義手を身に着け、街に出るようになったら、義手のイメージも変わるでしょう。
子ども用筋電義手の開発への期待
将来的には子ども用の筋電義手の開発も期待されます。先天的に手首から先が欠損している子どもや、事故で指を失った子どもがいます。筋電義手を戦隊ヒーローのようなデザインにすれば、喜んで着けてくれるかもしれません。筋電義手の普及率を高めることによって、より多くの人が希望を持って人生を進めるよう、より快適に生活が送れるように、手助けができるでしょう。日本における筋電義手の開発はまだ始まったばかりなのです。
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帝京大学 福岡医療技術学部 作業療法学科 教授 沖 雄二 先生
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