講義No.13758 医療技術

食品成分で感染症の治療をサポート! クランベリーのすごい力とは

食品成分で感染症の治療をサポート! クランベリーのすごい力とは

食品成分で病原菌を抑え込む

食品には健康に役立つさまざまな成分が含まれていますが、その中には細菌をおとなしくさせる「静菌」作用を持つものがあります。そのような食品成分を利用して、感染症の治療に役立てるための研究が行われています。感染症の治療には細菌を殺す抗生物質が有効ですが、近年は抗生物質が効かなくなる薬剤耐性菌の増加が問題になっています。これに対して食品成分は細菌を殺さないため、その成分への耐性を持つ変異は生じにくいというメリットがあります。また食品由来のため人体に害もありません。

ぼうこう炎の治療をサポート

「反復性尿路感染症」というぼうこう炎への治療戦略として有力なのが、クランベリーの主成分であるプロアントシアニジンです。ぼうこう炎の原因の大半は、腸内に常在して普段は善玉菌としてふるまう大腸菌がぼうこうに感染することです。このようなぼうこう炎は抗生物質の投与で完治したように見えても、半年~1年後に再発することが少なくありません。これは、組織侵入性を持つ大腸菌がぼうこうの細胞の中に入り込んで抗生物質から生き延びたあと、患者の体力が低下して免疫力が弱ると再び細胞から出て悪さをするためです。プロアントシアニジンには、この大腸菌の組織侵入性を抑える働きがあります。ぼうこう炎の治療薬に加えることで、大腸菌が細胞内に逃げるのを防ぎ、抗生物質の殺菌効果を高められるのです。

クランベリーで細胞に侵入する菌が激減

現段階では、人のぼうこうの細胞を使った試験管での実験が行われています。10万個単位の大腸菌を細胞に接触させたあと、抗生物質とプロアントシアニジンを投与します。その後、細胞に侵入した大腸菌の数を調べたところ、抗生物質だけ投与した場合は1000個単位の大腸菌が侵入していたのに対して、プロアントシアニンを加えた場合は10個単位にまで侵入が抑えられていました。
今後は研究の段階をさらに進めて、最終的には人での治験を経て治療へとつなげることが目標とされています。

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文京学院大学 保健医療技術学部 臨床検査学科 准教授 眞野 容子 先生

文京学院大学 保健医療技術学部 臨床検査学科 准教授 眞野 容子 先生

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微生物検査学

メッセージ

臨床検査技師は、患者さんの検査データを分析して治療方針などについて医師をサポートする職業で、がんや心臓、血液の病気、近年では痴呆症も含め人体のすべてが検査対象です。私自身はずっと医療系に進みたいと考えており、人体すべてを網羅するところに魅力を感じて臨床検査技師を志望しました。その後、ライフステージの変化もあって大学教員になりましたが、臨床検査技師の就職先は病院に限らず研究所や科捜研まで多岐にわたっています。特に医療に携わりながら研究や分析もやってみたいという希望があれば、お勧めの仕事です。

文京学院大学に関心を持ったあなたは

文京学院大学は、外国語、経営、コミュニティ社会、保育・教育、福祉、心理、理学・作業療法、臨床検査、看護を学べる4学部11学科からなる総合大学で、東京と埼玉の2キャンパスに約5000名の学生が学んでいます。建学の精神「自立と共生」のもと、2024年に学園創立100周年を迎えました。国内外のインターンシップ、地域貢献活動、異文化交流、自治体・企業との協働プロジェクトなど、さまざまな実践的プロジェクトを取り入れ、各領域の学び・資格を活かしながら、多様性を認める感性を持って活躍できる人材を育成します。