食品成分で感染症の治療をサポート! クランベリーのすごい力とは
食品成分で病原菌を抑え込む
食品には健康に役立つさまざまな成分が含まれていますが、その中には細菌をおとなしくさせる「静菌」作用を持つものがあります。そのような食品成分を利用して、感染症の治療に役立てるための研究が行われています。感染症の治療には細菌を殺す抗生物質が有効ですが、近年は抗生物質が効かなくなる薬剤耐性菌の増加が問題になっています。これに対して食品成分は細菌を殺さないため、その成分への耐性を持つ変異は生じにくいというメリットがあります。また食品由来のため人体に害もありません。
ぼうこう炎の治療をサポート
「反復性尿路感染症」というぼうこう炎への治療戦略として有力なのが、クランベリーの主成分であるプロアントシアニジンです。ぼうこう炎の原因の大半は、腸内に常在して普段は善玉菌としてふるまう大腸菌がぼうこうに感染することです。このようなぼうこう炎は抗生物質の投与で完治したように見えても、半年~1年後に再発することが少なくありません。これは、組織侵入性を持つ大腸菌がぼうこうの細胞の中に入り込んで抗生物質から生き延びたあと、患者の体力が低下して免疫力が弱ると再び細胞から出て悪さをするためです。プロアントシアニジンには、この大腸菌の組織侵入性を抑える働きがあります。ぼうこう炎の治療薬に加えることで、大腸菌が細胞内に逃げるのを防ぎ、抗生物質の殺菌効果を高められるのです。
クランベリーで細胞に侵入する菌が激減
現段階では、人のぼうこうの細胞を使った試験管での実験が行われています。10万個単位の大腸菌を細胞に接触させたあと、抗生物質とプロアントシアニジンを投与します。その後、細胞に侵入した大腸菌の数を調べたところ、抗生物質だけ投与した場合は1000個単位の大腸菌が侵入していたのに対して、プロアントシアニンを加えた場合は10個単位にまで侵入が抑えられていました。
今後は研究の段階をさらに進めて、最終的には人での治験を経て治療へとつなげることが目標とされています。
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