管理者のいらないネットワーク 暗号資産も支えるP2P技術
サーバなしで対等につなぐネットワーク
「暗号資産」とは、銀行などの信用機関が発行するのではなく、ネットワークの参加者がお互いに不正を監視することで信用を形成している電子的な資産のことです。これを可能にしたのが「ピアツーピア(P2P)」というネットワーク技術で、暗号資産で使用しているブロックチェーン技術はP2Pの一種です。
ネット通販などのサイトやSNSは、管理者としてのサーバに端末からアクセスすることでサービスを利用する「クライアント・サーバ型」のシステムです。一方、P2Pはサーバがなく、端末同士が対等な立場でつながっている「自律分散型」のネットワークを構築します。参加者が一億人いたとしても、情報の拡散や共有をすばやく行える仕組みになっています。
災害時の通信手段としても有望なP2P技術
P2Pでは各端末で処理を分担するので、サーバにアクセスが集中してシステムダウンするという事態を避けられます。また、たくさんの端末を経由して情報をリレーすることで、情報の発信者が特定されにくい仕組みをつくることもできます。そうした特徴を利用して、サイズの大きいデータを配信するサービスや、言論の自由が保障されていない国での匿名性の高い情報共有サービスにもP2Pが応用されています。
また、P2Pと無線通信の技術を組み合わせることで、災害時にインターネットが途絶した場合の連絡網として利用する研究も進んでいます。
通信リソースの浪費を減らす
一方で課題もあります。情報を受け取った人がほかの複数の参加者に転送するバケツリレーのような仕組みにより、同じ情報が何度も重複して送信され、通信リソースを消費してしまう場合があるのです。そこで、重複を回避できるPlumtreeというアルゴリズムを暗号資産の一つであるビットコインに適用する研究が行われ、通信量の削減効果があるという結果が報告されています。また、経由する端末の数を減らすことですばやく情報を拡散する研究も行われています。
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工学院大学 情報学部 情報通信工学科 准教授 坂野 遼平 先生
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