新しい情報処理技術が世界の金融や生活を変革しつつある

金融取引=相手を信用すること
あなたが誰かにお金を送りたい時、わざわざ現金をもって相手を訪ねなくても、銀行に送金を依頼できます。厳密には「スマホ等から銀行が管理する大きなサーバにアクセスして取引の指示をする(通信)」と「自分の口座の残高を送金先の口座の残高に付け替えてもらう(金融)」という2つのプロセスに分かれます。つまり、「操作した通りに銀行が口座残高を付け替えてくれる」という「相手(銀行)への信用」があって初めて成立します。全ての金融取引は相手を信用すること無くして成立しません。
新しい情報処理技術=ブロックチェーン
2008年に「ビットコイン」を実現するためブロックチェーンという情報処理技術が開発されました。ブロックチェーンにおける送金では、自分の口座残高を自分に代わって管理してくれる組織を必要としません。その代わり、暗号技術を使って、ネットに繋がった皆で共有する、誰一人として改竄できないデータベースに一人一人が直接アクセスします。送金は、自分のデジタル署名を使って自分の残高を減らした分だけ送金先に自身の残高を増やす権限を与えます。送金先は自分のデジタル署名を使って与えられた権限を行使して自分の残高を増やします。残高を減らすのも、残高を増やすのも自分自身なので、自分以外の誰も信用する必要がありませんし、送金は金融を含まず通信のみから成立することになります。
新しい情報処理技術が起点の変革
金融の歴史を振り返れば、「相手(銀行)への信用」が大きな役割を果たしてきたことがわかります。一方で信用が裏切られる歴史でもあります。信用する必要がない送金手段が広く用いられれば、金融に歴史にない変革が生じます。送金(決済)の変革は経済活動の効率を飛躍的に高め、生活の変革も誘発するでしょう。金融目線では送金から金融機能が除くことができるとは信じられません。ガリレオの「地動説」のように、常識や従来の仕組みを根本から変える変化が、新しい情報処理技術を起点として金融の世界で起こりつつあるのです。
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周南公立大学情報科学部 情報科学科 教授内田 善彦 先生
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