防災と伝統的建造物の保存で、安全で魅力あるまちづくりを
防災と保存は待ったなし
日本は災害大国といわれるほど地震の多い国です。最近は豪雨も頻発しており、災害に強いまちづくりは待ったなしの課題です。一方、地域の歴史と風土を伝える価値ある建造物やまち並みを、「重要伝統的建造物群」として保存する取り組みが各地で行われています。対象地区は約130カ所あり、かつての城下町、宿場町のほか港町、農村、漁村なども含まれています。老朽化している地区も多く、保存が急がれています。防災と保存は別々の課題として扱われることが少なくありません。しかし、適切な防災対応が行われなければ保存も進みませんから、両者は密接に関わっています。両者を総合的にとらえ、安全で魅力あるまちづくりを研究する必要があるのです。
感情やニュアンスまですくい取る
防災と保存をともに推進するために大切なのは、地域の人々が何を望んでいるのか、感情やニュアンスを含めてしっかりとすくい取ることです。個人個人の考えはさまざまですが、地域に関して共通して大事にしていることはあるものです。それをつかむように聞き取りを行うことが大切です。アンケートを実施することもありますが、集計し数値化するだけではあまり意味はありません。大事なのは、実際の声に耳を傾けることです。
空間体験を提供しイメージを共有
さらに大切なのは、なるべく早く空間体験を提供することです。防災も保存も数年から十数年にわたる取り組みが少なくありません。そうした期間、目に見える変化が何もなければ、人々は不安になり、まちづくりへの熱意が減退しかねません。そうした事態を避けるとともに、まちづくりのイメージをより豊かに共有するためには、プランニングの一端を目に見える形に創造し、実空間の中に出現させることが有効なのです。これは仮のものでも構いません。ここでの空間体験によって、人々はまちづくりを身近に感じ、イメージを膨らませることができ、それらを共有できるのです。そのことがまちづくりを推進する確かな基盤となることも間違いありません。
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先生情報 / 大学情報
工学院大学 建築学部 まちづくり学科 准教授 藤賀 雅人 先生
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