人間のすごワザ「折り紙」を、ロボットに伝授する方法

人間のすごワザ「折り紙」を、ロボットに伝授する方法

機械とは人間の機能の「外化」である

「機械とはなんぞや?」と突き詰めれば、人間の機能の「外化」にほかなりません。「外化」とは認知科学用語で「人間の頭の中の考えや理論を、文章や図形などの表現で外に出すこと」ですが、人間の頭や体の働きを外に出して、増幅したり先鋭化したりしたものが機械と言えます。例えば産業革命の立役者である蒸気機関は人間の肉体労働、つまり筋肉を外化したものですし、コンピュータは脳の計算機能を外化したものです。

ロボットに折り紙はできるのか?

いわゆるロボットも人間の機能を外化したものですが、まだ人間とすべて同じことはできません。ヒューマノイドのように形は人間に限りなく似せられても、人間の動作や機能の本質が解明できなければ同様の働きは望めません。
一例として、子どもにもできる折り紙をロボットにさせるのは至難の業です。人間が手指を使って造作もなくやってのける動作を詳細に分析したところ、ロボットでは4本の細い棒を微細に個別制御することで簡単な折り紙ができることがわかりました。人間の手の形に似ていなくても、機能の本質から攻めれば人間と同じ作業ができるのです。

紙の「ゆらぎ」を制御する人間のすごワザ

しかし問題はまだあります。ロボットは寸分たがわず設定した動きを繰り返すことは得意ですが、紙は柔らかいので状態に「ゆらぎ」があり、毎回同じ条件ではないために同じ動作を繰り返すロボットでは失敗してしまいます。人間の手指は経験則でこのゆらぎを無意識に感じ取り、ゆらぎを巧みに対応するように折っているのですが、これを数式で表してロボットにインプットすることは困難です。そこで人間が文字通りロボットに手取り足取り実演して教え込む「直接教示」という方法を取ります。折り紙の角同士を合わせる動作を何十回も一緒に実演すると、ロボットがゆらぎの情報を修正するスキルを学習して失敗しなくなります。「加減」という人間の微妙な感覚を教えるのに、理屈より実地訓練がベターというのは非常に面白い点です。

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神戸大学 工学部 機械工学科 教授 横小路 泰義 先生

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一生懸命勉強することは大切ですが、学んだことを確実に自分のものにし、それをベースに新たなアイデアを考えだせるようになるには「実体験」が欠かせません。学問の世界のみならず、あなたが進んでいく道は果てしない山の高みをめざすようなものです。その山の裾野には実体験で築かれた、しっかりとした基盤がなければ山は崩れてしまいます。今は一見なんの役に立つのかわからないようなことでも、将来あなたが築いてゆこうとする高い山の重要な基盤となるかもしれません。ぜひあなたの五感を通しての実体験を積み重ねてください。

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