体内の分子の動きをシミュレーション!
分子の動きがわかると、病気の根源がわかる!?
人間の体はたんぱく質でできています。このたんぱく質の分子レベルでの動きが、体にどのような影響があるのかを調べるために、コンピュータによるシミュレーションが活用されています。
例えば、細胞の内側と外側を隔てる「細胞膜」で考えてみましょう。この細胞膜上には非常に多くのたんぱく質が浮かんでいます。そのたんぱく質の一つが「アクアポリン」と呼ばれるもので、水の透過に重要な役割を果たしています。アクアポリンがきちんと働かないと、白内障や腎性尿崩症という病気にかかりやすいことも、確かめられています。
それでは、アクアポリンがどういう状態のときに、こうした疾患が発症するのでしょうか。
分子の複雑な動きを、コンピュータで“再現”する
アクアポリンは約300個のアミノ酸からできています。さらに一つひとつのアミノ酸は遺伝子情報によって性質が決まっています。仮に、あるアミノ酸に遺伝子情報の誤りがあり、本来とは違うアミノ酸ができてしまったとします。そのとき、全体のアクアポリンがどのようになるのかは、実際にコンピュータでシミュレーションしてみて初めてわかることもあります。なぜなら、一つのアクアポリン中にある約300個のアミノ酸は、互いに引き合ったり反発しあったりしながら動き続け、細胞膜の水の透過に影響を与えているからです。
開発が待たれる超高性能コンピュータ
将来的には、「こういう遺伝子のときには、水の透過性はこの程度だから大丈夫」とか、「この場合はすぐに治療が必要」など、個々のケースに対応できるだけの実用化が進めば素晴らしいことです。理論的には可能なのですが、なにせ、非常に多くの条件を正確に計算しなければ意味がないため、コンピュータの性能は、現在の100万倍あっても、まだ足りないくらいなのです。
このような分子のシミュレーションのために、超高性能コンピュータの開発が熱望されているのは、そのためなのです。
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