新たな「触媒」で持続可能なものづくりを
ものづくりに欠かせない触媒
「触媒」とは自身は変化せずに、化学反応を推し進める働きをする物質です。プラスチック、医薬品、洗剤、化粧品などの多くは、触媒を用いた化学反応により効率よく作られています。医薬品などでは反応物と一緒に溶かして使う触媒が多いのに対して、化学基礎品を作る場合の多くは固体の触媒が用いられています。気体や液体の原料が固体の触媒に接触することで反応が進むので、触媒の表面積をできる限り大きくするなどの工夫が、良い触媒としての重要な鍵となります。
固体の触媒の性能を高めるには
すぐれた固体の触媒を作るには、新たな材料を用いて作り方を工夫することが重要です。太陽電池などさまざまな用途で用いられているペロブスカイト型化合物のうち、新たな触媒材料として、フッ化物である「フルオロペロブスカイト」に注目しています。さらに、それを「メカノケミカル」という製造方法を使うことで、触媒としてさらに優れた性質を引き出すのです。メカノケミカルは、機械的なエネルギーを加えることで化学反応を起こす現象です。固い材料で作られた球状の容器に原料と多数の小さなボールを入れ、容器を回転させます。すると、ボールが衝突するエネルギーが原料に加わることで化学反応が起きるというものです。
メカノケミカルがもたらす触媒機能
フルオロペロブスカイトは、通常では原子が規則正しく並んでいる結晶ですが、この製法の機械的なエネルギーにより結合が切断されてしまうため、本来なら原子がつながっているところが外れて、特に固体表面は非常に反応性の高い状態になります。また、フルオロペロブスカイトは熱によっても生成できますが、熱処理をすると粒子同士がくっついてしまいます。一方で、メカノケミカルでは粉砕をするので、粒子が細かくなり表面積が大きくなります
このように、反応性に富んだ固体表面がたくさんある触媒を作り出すことで、物を製造する過程で、よりエネルギーが少なくなり、廃棄物を出さずに、地球環境にやさしいプロセスを見出すことができるのです。
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工学院大学 先進工学部 応用化学科 准教授 飯田 肇 先生
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