持続可能な社会を実現するための有機化学合成法とは?

持続可能な社会を実現するための有機化学合成法とは?

環境に優しい化学「グリーンケミストリー」

グリーンケミストリーという言葉を聞いたことがありますか? 「環境に優しい化学」とも言われ、合成化学が持続可能な社会の実現に貢献するための重要な考え方とされています。例えば、「物質を設計・合成し、応用するときに、有害物をなるべく使わない・出さない化学」が挙げられます。その背景には、作り出された有機化合物が医薬品や化学繊維などに幅広く活用され、現代社会に欠かせないものとなった一方で、生産・利用、および合成過程で生じた副生成物による環境・海洋汚染などの問題が地球規模になっていることがあります。

グリーンケミストリーで推奨される触媒反応

グリーンケミストリーの指針として、「廃棄物を出してから処理するのではなく、出さない」「人体や環境に害の少ない反応物を使う」など12カ条が示されています。その中に「できるだけ触媒反応をめざす」があります。特定の物質を作る方法が複数ある場合、適切な触媒を活用した合成方法を用いることで、簡単に手に入る物質から効率よく合成することが可能になるからです。グリーンケミストリーの指針に沿う、触媒反応を使った有機化合物合成法は世界中で盛んに研究されています。日本でも、医薬品や機能性材料として有用な「ヘテロ環化合物」の合成を、植物由来の原料と比較的安価な金属触媒を使い、副生成物が水だけとなる方法などが研究されています。

新たな触媒合成方法を生み出す

原料と触媒の組み合わせ以外の面からも、より環境に優しく、サステイナブル(持続可能)な合成方法が研究されています。その一例が「フロー式触媒反応」です。触媒反応の一般的なやり方はバッチ反応といってガラス容器で撹拌(かくはん)する方法なのに対して、フロー式触媒反応では、カラムと呼ばれる細長い管に触媒を詰めて原料を連続的に流し込み、生成物が連続的に得られるように工夫します。エネルギー効率がよく、温度などのデジタル制御が可能などのメリットがあり、新しい反応方法として期待されています。

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山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 准教授 皆川 真規 先生

山形大学 工学部 化学・バイオ工学科 准教授 皆川 真規 先生

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有機合成触媒化学

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メッセージ

高校時代は知らないこと、わからないことがたくさんあると思います。それを勉強していくと、新しく見えてくるものがあると同時に、また新たなわからないことが出てきます。それをまた学ぶと、またわかることがあるけれど、やはりわからないことが出てくる、その繰り返しです。科学も同じで、いくら実験してもわからないことはたくさんあります。しかし、新しく見えてくるものも必ずあります。現状にとどまらずに、常に自分の世界をアップデートしながら、新しく見えてくる世界を楽しんでほしいと思います。

先生への質問

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山形大学は、東日本有数の総合大学であり、4つのキャンパスはネットワークで融合されています。社会のリーダーにふさわしい基本能力と幅広い教養を身につけるため、教養教育に力を入れています。大学運営の基本方針として、一つは、何よりも学生を大切にして、学生が主役となる大学創りをするということ、そしてもう一つは、教育、特に教養教育を充実させるという2点を掲げています。