石の中に閉じ込められた記録からひも解かれる、地球内部の物語

石の中に閉じ込められた記録からひも解かれる、地球内部の物語

岩石の手がかりから地球内部をのぞく

私たちが住む地球は、地殻、マントル、核が層構造を形成していますが、マントルは地下10kmから数千kmの深さにあり、その動きは直接観察できません。しかし、地表に表れた岩石を手がかりとすることで、マントルの様子や、過去から現在へどう変化してきたかを読み解くことができます。その手がかりのひとつが「捕獲岩」です。マグマが火山内部を上がってくるときに、通り道の岩石を取り込んでできたのが捕獲岩で、捕獲岩の中にはマントル物質でもある「かんらん岩」が含まれています。

かんらん岩に見いだす水の存在の証拠

捕獲岩として得られたかんらん岩を磨いて厚さ0.03ミリの薄片にして観察し、含まれる鉱物の量比や化学組成、変形の有無などを調べます。化学組成からはそのかんらん岩があった地中の深さやその場所の温度がわかります。またかんらん岩の中に、本来の成分に加えて水を含む角閃(かくせん)石や雲母が多く入っていれば、マントルに水が存在する証拠と言えます。
海洋性プレートがほかのプレートの下に沈んでいく「沈み込み帯」では、一緒に沈み込んだ水がマントルに固定されると予想されていましたが、かんらん岩の解析はそれを確認するものとなりました。かんらん岩に含まれる水にはさまざまな元素が溶け込んでいるので、それらの元素がマントルでどのように動いているのかも解明されつつあります。

岩体調査で沈み込み帯マントルの全貌を

さらに、これまで沈み込み帯のマントルは酸化的な環境にあると考えられていましたが、かんらん岩捕獲岩の中に合金が見つかったことから、還元的な部分もある可能性が出てきました。
捕獲岩から得られるのは、沈み込み帯付近のマントル上部の情報に限られています。また捕獲岩は比較的小さく、複数ある捕獲岩同士の関係を知ることはできません。そこで調査対象をプレートがのし上がって地表に露出した「岩体」に広げ、沈み込み帯のマントル全体を解き明かそうと研究が進められています。

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熊本大学 理学部 理学科 准教授 石丸 聡子 先生

熊本大学 理学部 理学科 准教授 石丸 聡子 先生

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地球環境科学、地学

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