酸素がない泥の中で生きる! 嫌気性微生物の生態
酸素がなくても生きられる微生物
人間などの生き物は、呼吸により酸素を取り入れて二酸化炭素と水を出しています。そのため酸素のない環境では生きられません。しかし微生物の中には、酸素がなくても問題なく生活できるものがいます。これらは嫌気性微生物と呼ばれており、さまざまな種類が存在しています。硫酸イオンを取り入れて、硫化水素を出して呼吸する「硫酸還元菌」というグループもそのひとつです。
硫酸還元菌がヘドロの原因に?
硫酸還元菌は海底の泥の中などに生息しており、硫酸イオンを硫化水素に変えています。硫化水素が泥の中に含まれる金属と反応すると、黒く悪臭を放つヘドロになります。そのままの状態が続いて硫化水素が水中に大量に溶け出すと、酸素を必要とする生物が住めない環境になりかねません。東京湾などで見られる「青潮」も、泥の中から水に溶け出した硫化水素が増えて、海面に上がってくることで起こる現象です。対策を考えるためにも、水中にどのような硫酸還元菌がいるか調査が始まりました。
微生物の種類を調べる
水圏環境から微生物を採取して種類の判別が行われます。種類を特定するためには遺伝子の解析が必要です。微生物のDNAを取り出して塩基配列を解読することで、すでに発見されている微生物と同じ種類か、どの微生物と親戚なのかがわかります。ほかの微生物の塩基配列と大きく異なる場合は新種である可能性が高く、実際に福井県の水月湖からは、スイゲツモナスという微生物が発見されました。スイゲツモナスはバクテリアをエサとして、酸素があってもなくても生きられるという特徴があります。バクテリアを食べる原生生物が、酸素がない環境でも働いており、無酸素の生態系の一員が明らかになりました。
微生物を培養する工夫や、その遺伝子解析技術は時代とともに発展して、続々と新種が発見されています。2015年以降、毎年約1000種類ほどの新種の細菌・古細菌が見つかっています。まだ知られていない微生物も多いと予想されており、研究の余地がある分野だといえます。
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先生情報 / 大学情報
福井県立大学 海洋生物資源学部 海洋生物資源学科 教授 近藤 竜二 先生
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