アフリカの食糧問題を解決するため「魔女の雑草」に挑む
寄生植物ストライガとは
アフリカの食糧問題の大きな原因の一つは、「魔女の雑草」と呼ばれる寄生植物、ストライガです。寄生植物とは宿主の植物から栄養や水分を吸い取って成長する植物のことです。ストライガはイネやトウモロコシなどに寄生して宿主植物を枯らせてしまうため、アフリカでは深刻な被害が出ています。ストライガの種子は、近くに宿主となる植物が生えると、それが根から出すストリゴラクトンという物質を感知して発芽し、寄生します。寄生植物であるストライガは、発芽しても宿主がいなければ一週間ほどで枯死してしまうため、そのしくみを逆手にとってストリゴラクトンを人工的に合成して作付け前の畑にまけば、ストライガを「自殺発芽」させて駆除できると考えられます。
ストライガの受容体に着目
本来ストリゴラクトンは植物と共生する菌根菌を呼び寄せる働きや、植物の成長を制御する働きを持つ植物ホルモンです。人工ストリゴラクトンをまくことで、ほかの植物や微生物へも影響が及びかねません。そこで、ストリゴラクトンが結合するストライガ側の受容体タンパク質に着目し、ストライガの受容体のみに結合して活性化し、ほかの植物や微生物の受容体には結合しないような化合物を探索しました。
SPL7で緑の畑に戻す
数万種類の化合物の中からストライガの受容体にのみ結合する分子が見つかったものの、農薬として使えるほどの十分な活性はありませんでした。そこで構造の改変を進めた結果、偶然にできた副産物の中から非常に高い活性を示す分子が見つかったのです。その分子をさらに改良して誕生したのが、驚異的な活性を持つ「SPL7」です。スティックシュガー1本分にあたる3gのSPL7を琵琶湖の水で薄めてもなお、ストライガを発芽させることができます。すでに日本国内の実験室では、SPL7でストライガの死滅に成功しています。ストライガの花でピンク色に染まってしまったアフリカの畑を緑に戻すため、現地での取り組みが始まっています。
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名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 特任教授 土屋 雄一朗 先生
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