光で捕らえるがん細胞~がんの新たな内視鏡診断~
内視鏡診断の限界
「胃がん・大腸がん・肺がん」は日本人の3大がんです。このことから消化管のがんが圧倒的に多く、発生する頻度も高いことがわかります。これらの診察には通常、内視鏡を使うのですが、特に大腸の診断には15%程度の見落としがあると言われており、高精度の診断方法が求められてきました。さらに、がんの大きさをどう評価するかという問題もあります。治療後にがんがどれくらい小さくなったかについても、CT(コンピュータ断層撮影)による検査では細胞が死んでいても大きさ自体はあまり縮小しないので、定量的に診る方法の確立も課題です。
治療薬を光の技術で診断物質に
2000年以降がん研究は飛躍的に進歩していますが、このように診断にもまだ課題があります。そこで、注目されているのが、診断や治療に光を使う方法です。
例えば、大腸がんでは、がん細胞が増えるメカニズムのひとつとして、がん細胞に特異的なタンパク質(EGFR:上皮成長因子受容体)が過剰に発現することがわかっています。そのEGFRを不活性化させる分子標的薬がすでに標準治療薬として実用化されています。この薬に蛍光物質をつけてEGFRと結合したら光るように設計した探索物質(蛍光プローブ)を使って、大腸内視鏡診断の精度を高めようというものです。感度を上げると、がんの大きさなどの状態を詳細に把握することも可能になります。そして、この研究は光を当ててがん細胞を死滅させるという治療法にもつながります。
患者さんの負担を減らす
現在のがん診断ではPET(陽電子放出断層撮影)やCTがよく用いられています。しかし少量とはいえ放射線を浴びることから、患者さんの負担を考えると回数にも限度があります。この課題解決にも光を使った診断や治療は新たな道筋をつけそうです。
新たな診断・治療法の研究はやはり3大がんに対するものが多いので先行していますが、光を使った技術が確立されると、次はほかのがん診断・治療への適用です。ここにも大きな期待が寄せられています。
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徳島大学 医学部 医学科 消化器内科学分野 教授 髙山 哲治 先生
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