リーダーシップは理論で表せるか? 人間行動の法則を読み解く
リーダーの行動は2つに分類できる?
学校の部活や仲間の中で、リーダーになる人がいます。このリーダーがどんな行動をとっているかを調べてみると、2つの評価軸で分類できるという結果がでました。1つは、ほかの人たちに仕事のやり方や手順などをきちんと教えて、目的に沿ったグループを組織する「構造づくり」の行動です。もう1つは、場の雰囲気をよくしようとコミュニケーションを重視して、困っているメンバーに声をかけるなど、グループ内での調和や信頼感を生む「配慮」の行動です。これを、1950年代にオハイオ州立大学によって発表された「リーダーシップの二要因論」と言います。
現実は理論通りにいかないこともある
さらに、どのようなリーダーがいるグループが高い成果を上げられるかを調査したところ、予想通り、「構造づくり」と「配慮」の行動が両方とも高いリーダーのいるグループが上位で、反対に2つの行動がともに低いリーダーのグループが最下位でした。
しかし、必ずしもこの理論に当てはまるケースばかりではありません。例えば、やる気のないメンバーがいた場合、「配慮」の行動が高いリーダーよりは、厳しくメンバーに接するリーダーの方が、成果が上がることもあるのです。
人間行動の法則性を見つける面白さ
人間の行動は環境や心理などさまざまな要因がからみあって複雑なものです。予定外の行動も頻発します。例えば朝、「今日は○○をしよう」と考えても、実際には別のことをしていたりしませんか? 人間の複雑な行動をシンプルな理論で説明することは、とても難しいものです。ですから、ある理論が発表されても当てはまらないケースが出てきて、それに当てはまるような理論を新たに生み出す……ということを繰り返す必要があるのです。
経営学における「組織論」の分野では、組織の行動分析も盛んに行われています。ランダムに見える人間の行動に潜む法則性を突きつめていくことに、この学問の面白さがあります。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 経済学部 教授 犬塚 篤 先生
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