生命の不思議が詰まった「タンパク質」の可能性は無限大!
除草剤に強い植物
生物の体を構成する主要な要素の1つであるタンパク質は、さまざまな謎を秘めています。生体内の化学反応を促進する物質である「酵素」もタンパク質の一種であり、こうしたタンパク質の機能と構造を解明しようという研究が進められています。
例えば、日本型のイネはある除草剤に対して抵抗力を持っていることがわかっています。それは、薬剤を分解する機能を持つ酵素の働きなのですが、その構造を解析していくことで、除草剤に強い農作物を生み出すことが可能となります。
葉緑体は大切な「物質工場」
植物の細胞内には、光合成を行う「葉緑体」という器官があります。動物の体内には存在しないこの葉緑体は、二酸化炭素を吸って酸素を吐き出すだけでなく、太陽光のエネルギーを化学的エネルギーに変換して、タンパク質を構成する「アミノ酸」など、さまざまな栄養素を生み出すシステムを持っています。葉緑体は、地球上で最も安全で、大切な「物質工場」と言えるでしょう。この葉緑体の中で行われているタンパク質合成を、現在では試験管の中で再現することに成功しています。試験管の中でタンパク質を作り出すことで、その仕組みが次第に解明されつつあるのです。物質工場の仕組みがわかれば、地球上の食料問題、エネルギー問題を解決する糸口が見つかるかもしれません。
生物の多様性の解明へ
タンパク質の機能と構造を解明することは、生物の未知なる機能の解明であり、それは生物の多様性の解明にもつながります。「赤痢(せきり)アメーバ」や「マラリア原虫」など、病気を引きおこす微生物は、細胞内にヒトとは異なるミトコンドリアを持っていて、その違いを分析することで、病気の特効薬を作ることができます。
また、食品づくりに欠かせない「発酵」という現象は、「酵母」という微生物の働きによるものです。生物の多様性は人間にとって何物にも代えられない大切な資源であり、多種多様なタンパク質を調べていくことは、医療や食品、環境など、さまざまな分野に応用可能な発見をもたらすのです。
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埼玉大学 理学部 分子生物学科 教授 戸澤 譲 先生
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