綿ぼこりからも作れる夢の新素材「セルロースナノウィスカー」とは?
最先端のバイオマス素材
いま話題の「セルロースナノファイバー」は、木材などから得られる植物繊維を、直径数ナノメートルの極細で長い繊維として取り出したものです。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持つこの繊維素材は、極細の形状や高い耐熱特性など、ユニークな特徴を備えています。生産や廃棄の際の環境負荷が低いという点でも注目されている、最先端のバイオマス素材です。身の回りでも、靴底など樹脂を補強するための素材やフィルター素材、抗菌・消臭シート、化粧品や食品など、様々な製品に用いられています。
極細のマッチ棒のような繊維
セルロースナノファイバーの課題は、繊維を抽出する工程でかなりの手間とコストがかかる点です。また、極細で長い繊維は強度が一様ではなく、場所によっては強度が弱くなることもわかっています。水を加えた際に急激に粘度が上がる点や、繊維自体が長すぎる点も、用途によっては扱いづらい場合があります。
一方、塩酸や硫酸を用いて、セルロースナノファイバーとは異なる方法で抽出した微粒子があります。「セルロースナノウィスカー」と呼ばれる、極細のマッチ棒のような形状をした素材です。繊維の硬い部分だけを取り出していることから、用途によってはセルロールナノファイバーよりも扱いやすい特性を備えています。抽出元の素材として綿や木材パルプなどが利用できるため、布の切れ端や部屋の隅の綿ぼこり、さらには廃棄された古紙なども活用できると考えられています。
目的別に最適な素材を選べるように
微細な構造で、人体に取り込んでも害のないセルロースナノウィスカーの特徴を生かす応用例としては、樹脂の補強の他に、銀微粒子を付着させて補強効果と抗菌性能を同時に持たせたり、布に吹き付けて消臭性能を与えたりするなど、さまざまなアイデアが検討されています。
セルロースナノウィスカーやセルロースナノファイバーは、製造方法によって性質が異なるものが多く存在するため、目的に応じて最適な性質を持つ素材を選べるような環境づくりが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 繊維学部 化学・材料学科 教授 荒木 潤 先生
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