天然素材の「粘土」に秘められた、驚くべき可能性
物質科学から見た「粘土」の特性
「粘土」というと土色の物質というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、主にケイ素、マグネシウムやアルミニウムと酸素との化合物で、実は人工的に作ると真っ白です。また混ぜる元素によってはピンクや青、黒などカラフルなものも作れます。粘土の粒子は薄くて平らなシートが紙の束のように積み重なった形をしており、そのサイズのわりに面積が広いことが特徴です。表面は電荷を帯びていることから、イオン交換性、吸着性、分散・凝集などのコロイド性、膨潤性などと共に、さまざまな反応を促進できる活性の高い表面でもあります。
粘土の持つセンシングや浄化の機能
これらの粘土の特性を生かして、さまざまなものが作られています。身近なところでは、吸着性や固形化する特性を利用した例として、ファンデーションや鉛筆などに粘土が含まれています。環境を見る機能としてはガスのセンシングや、きれいにする機能としては水の浄化や廃棄物処理などで活用されています。
例えば、介護の現場では、排泄物に含まれるアンモニアを検知して、自分の意思が伝えられない患者さんの代わりに看護師に知らせるセンサーを作ることができます。自然環境では、富栄養化が進む湖において、赤潮やアオコ発生の原因となっている有害なイオンやリン、窒素などを粘土を使って効率よく取り除くこともできます。
環境への寄与
さらに天然素材である粘土は、含有する有害物質を除去した後、自然に返すことができるので自然循環に適した材料だと言えます。現在、再生できる粘土のメカニズムの研究も進められています。粘土の持つイオン交換性や化学平衡といった現象を利用し、外部の有害イオンを選択的に粘土の中に取り込み、その粘土から有害物質を外へ排出することで、その粘土を繰り返し使用しようというものです。
粘土には1000の機能があると言われ、実用化されているのはわずか数パーセントにすぎません。まだまだ使い道はありますし、発見されていない現象もたくさんある可能性を秘めた物質なのです。
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先生情報 / 大学情報
島根大学 材料エネルギー学部 材料エネルギー学科 教授 笹井 亮 先生
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