化学の力でクリーンな未来を切り開く
大型車にも使える水素燃料電池
地球温暖化を抑制するため二酸化炭素の排出抑制は喫緊の課題ですが、家庭や工場については、省エネ・節電の技術やエネルギー効率の高い機器への切り替えで電力使用量が下がり、二酸化炭素の排出量は減少しています。その一方で物流業界では、二酸化炭素の削減はあまり進んでいません。トラックやバスなど重量のある大型車両を動かす内燃機関の置き換えが進んでいないためです。そこで、大型車両を動かせるような、出力が高くて耐久性のある燃料電池の開発が進められています。一つの技術として、燃料電池を構成する電極と電解質のうち、電極に化学修飾をして性能を上げることがあります。このように、化学の知見から二酸化炭素の排出抑制やSDGsの達成を目標とした研究が行われています。
安価で豊富な材料から作るグリーン水素製造電極
水を電気分解してグリーン水素を発生させる装置も、燃料電池と同じく電極と電解質から構成されています。電極の材料である「白金(プラチナ)」より低コストな材料が世界中で模索されています。その候補として、活性炭にチタンと酸素、窒素を組み合わせた「新しい化合物」があります。この化合物の性能を白金に近づけるための研究が進められています。
竹から新素材を作る
竹の有効活用もSDGsの達成に貢献します。竹の異常繁茂(はんも)は生活環境と自然環境の問題になっていますが、この竹から新素材「セルロースナノファイバー」を作る技術が開発されました。この新素材には様々な用途が期待されています。保湿性が高いことから化粧品に使われるほか、宇宙で利用するための研究開発も進められています。宇宙開発は民間の時代に入り、人工衛星などの宇宙機は軽くて低コストが求められ、プラスチック素材が多用されています。プラスチックは宇宙空間でアウトガスという不具合を起こす場合がありますが、竹から作ったセルロースナノファイバーは不具合を抑制できる可能性が示されています。竹が宇宙空間で使えれば、宇宙開発はよりクリーンになるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
大分大学 理工学部 理工学科 生命・物質化学プログラム 教授 衣本 太郎 先生
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機能物質化学先生が目指すSDGs
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