文化財修復のための最新科学的手法による構造解析
文化財研究とミステリーボックス
科学的手法を駆使した文化財建造物の構造挙動に関する研究は、30年ほど前から本格的に始まった比較的新しい学問体系であり、日本ではあまりなじみのない研究分野です。この分野の例えとしてミステリーボックスを挙げます。中を見ずに箱の中に何が入っているかわかるでしょうか。文化財の歴史的価値を守るため、中を見ずに箱の中身について適切な考察をするように出来る限り現状に影響を与えず、調査を行う必要があります。
文化財の構造解析
科学的手法において未知数はとても厄介な存在です。連立方程式を解く際に非常に多くの未知数があるとすれば、それと同じ数の式を用意することは骨が折れる作業です。実験、モニタリングなどを最新の技術を駆使し、現状を把握します。これらの手法で得られた理解を基に、耐力を検証するのが文化財の構造解析です。解析結果を参考に、修復、補強方針を定めます。このように一定の方針はあるものの実際はまだまだ手探りの点が多く、大きな発展可能性を秘めた分野です。非常に古いものを対象とした非常に新しい学問という点が興味深いところです。
文化財修復とグローバル化
世界遺産のような文化財は地球の共有財産であるとの考えから、国際的な場での意見交換による合意により修復方針を定めます。文化財修復についてもグローバル化が進んでいるのです。グローバル化とは世界中で認識を共有することであり、没個性的ともいえます。欧米圏のキリスト教的世界観とは異なる独自な感性を我が国は持っています。海外の方々が日本に興味を持つのはこの点であり、安易なグローバル化は個性を失うことになると危惧されます。では、グローバル化とどのように向き合うべきでしょうか。正解、不正解はありませんが、独自な感性を持つ国の文化財の未来について、真剣に考えて対応する必要があります。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 工学部 建築学科 准教授 遠藤 洋平 先生
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