血液がうまく固まらない? フィブリノゲン異常症に立ち向かう
かさぶたの正体は?
けがをして出血すると、かさぶたができます。かさぶたを作っている中心的な成分は、フィブリノゲンという血液を固める機能を持つタンパク質です。しかし、遺伝的にこの機能に障害を持つ「フィブリノゲン異常症」という病気があります。
この病気の発見には、患者の血液を使った遺伝子解析が行われます。世界中で発見されたフィブリノゲン異常症を集めたデータベースと比較することで、見つかった遺伝子変異があると出血しやすい、血栓ができやすい(固まった血液が溶けにくい)などの症状を判断・予測することができます。
症状を正確にとらえるために
これまでに報告されていない新しい遺伝子変異が見つかることもあります。その場合には、フィブリノゲンにどのような異常があるのか分かりません。そこで、培養細胞にフィブリノゲンの変異遺伝子を導入して「リコンビナントフィブリノゲン」を作り、機能を正確に分析する研究があります。例えばトロンビンというフィブリノゲンを固まらせる酵素と反応させたときに、リコンビナントフィブリノゲンが正常のフィブリノゲンよりも固まりにくいとします。すると、そのリコンビナントフィブリノゲンと同じ遺伝子変異をもつ患者は、出血が止まりにくい症状がありそうだと判断できます。遺伝子変異によって生じる機能異常の研究が進めば、患者により適切な対処ができるようになるでしょう。
フィブリノゲンが関与する新しい病気
血液を固める機能とは異なる新しい種類の病気が見つかってきました。フィブリノゲンは血液中に存在しますが、ある遺伝子変異では肝臓にフィブリノゲンが蓄積して肝硬変を引き起こすことが確認されました。さらに、腎臓に蓄積してしまう遺伝子変異も見つかってきました。これらの病気への対処方法を明らかにするために、リコンビナントフィブリノゲンを作るときと同様に培養細胞に遺伝子変異を導入することで病気の細胞モデルを作り、メカニズムの究明や、治療薬を見つける研究が行われています。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 医学部 保健学科 検査技術科学専攻 助教 新井 慎平 先生
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