針の工夫で透析治療の負担を軽減せよ
血液透析の負担を軽減するには?
腎臓の機能が悪化した患者に行う血液透析は、老廃物などを含む血液を体外に出し、きれいにしてから体内に戻す治療方法です。この治療方法は血管に針を刺して行いますが、大量の血液を通すために、健康診断の血液検査で使う針の約1.5倍の太さの針が使われます。透析は定期的に行う必要があるので、太い針を何度も刺していると患者の血管がもろくなるほか、刺されたときの痛みが強いなど、患者に負担がかかります。こうした課題を解決するために医工学の研究が行われています。
治療に使う針を細くする
患者への負担を軽くする簡単な方法は、針を細くすることです。しかし透析では1分間に200ml程度の血液を移動させることが求められます。太い針に比べると細い針はこの流量を確保することが難しいと考えられてきました。適切な針の形状を探すために、コンピュータでさまざまな針のモデルを作って実験と解析が行われています。その結果、先端に1つだけ穴がある細い針であれば、必要な流量を確保できるとわかってきました。臨床の現場では横にも穴が4~5個あいている太い針が使われています。穴が多ければ血液をたくさん吸い上げられると考えられていたからです。ところが複数の入り口があることで血液の流れが複雑になり、かえって吸い上げにくくなっている可能性が見えてきました。
コンピュータを使った医工学
針に複数の穴が必要とされていた理由はほかにもあります。もし針の先端が血管の壁に当たってふさがってしまっても、針の横にも穴があれば刺し直すことなく透析を行えるからです。血管に針を入れたときに先端がどう動くのかは、まだ解析が十分ではありません。そこでコンピュータを使い、針の動きをさまざまな条件で観察しようと試みられています。解析ソフトは車の開発現場で空気の抵抗を可視化するときに使われているものと同じ原理のものです。他分野の技術も積極的に取り入れて、患者に負担の少ない細い針を実現しようとしています。
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先生情報 / 大学情報
群馬パース大学 医療技術学部 臨床工学科 講師 島﨑 直也 先生
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