血液が造れない! 血液透析の合併症を治療する
体の恒常性を崩す慢性腎臓病
腎臓は体内の余分な水分や毒素をキレイにし(浄化し)、体内の恒常性を保つ働きをしています。しかし、腎臓の働きが悪くなると、体の恒常性が維持できず、体内に水分や毒素が蓄積してきます。このような腎臓の働きが不十分になった状態を慢性腎臓病といいます。慢性腎臓病になると「尿毒症」という様々な症状が出現し、放置すると心不全や肺水腫を起こし命の危険にかかわってきます。
血液透析の治療
このような状態を回避するため、慢性腎臓病の病状が悪化した場合には、日本ではほとんどの患者に血液透析を行っています。腕の血管から血液を体外に出し、人工腎臓と呼ばれる機械に通してろ過し、再び体内に戻します。現代では、日本人の成人の8人に1人が慢性腎臓病であり、約400人に1人が血液透析を受けています。
健康な腎臓は1日24時間、絶え間なくろ過し続けています。しかし、血液透析は通常2日に1回、4~5時間の治療となります。つまり週3回行っても1週間で12時間分しか腎臓が動いていないということになります。血液透析は腎臓病の治療に関して最も実績がある治療法の一つですが、腎臓の全ての機能を代替している訳ではないため、心・脳血管、骨代謝など様々な合併症が出現してしまいます。
合併症治療法の確立をめざして
中でも腎性貧血は、腎臓から血を造るためのエリスロポエチンというホルモンが出なくなることで起きる慢性的な貧血です。ホルモンの薬と血の材料となる鉄分を投与することで治療をしていますが、鉄分は適切に投与しないと肝臓や脳にたまってしまうこともあり、がんなど別の病気を引き起こす可能性があります。また血液はたえず一定の量であるのが望ましく、ホルモン投与のタイミングで造りすぎたり減りすぎたりするとリスクが上がってしまいます。現在は検査データの解析により、適切な薬の投与方法を探っている段階です。鉄分を投与した際にどこに偏るかなどを調べていくことで、効果的な投与方法の確立をめざした研究が進んでいます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
森ノ宮医療大学 医療技術学部 臨床工学科 教授 辻 義弘 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
保健医療学、臨床工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?