「自分でやる」という自信が、こころとからだを元気にする!
作業療法士ってどんな仕事?
作業療法士は、身体(からだ)または精神(こころ)に障害のある人を対象とした、リハビリテーションの専門家です。理学療法士が「立つ」「歩く」といった基本的動作の回復を目的としているのに対し、作業療法士は家事・食事といった応用的な動作に加え、「社会適応能力」の回復を目的としています。例えば、認知症の患者は、人や物とうまく関われずに自信をなくしていきます。作業療法士は、運動や創作活動を通じて、患者が「役割感」を得て、「自己効力感」を高め、「自主性(自発性)」を向上させる支援をしています。
オーダーメイド治療
過去を振り返って人に自分のことを語る「回想法」という治療法は、脳の血流を増やすことで認知機能の改善に貢献するとともに、自信の回復や存在意義の再認識を促します。また、昇降運動と文字を読むという2つのタスクを同時に行う「マルチタスクトレーニング」は、運動能力や注意機能の向上に役立ちます。私たちは食べながらテレビを見る、話しながら歩くなど、日常的にマルチタスクを行っています。しかし、認知症の患者にとっては難しい行為となります。得意・不得意や症状の程度は人によって違います。文字を読まずにおしゃべりだけする、青色の文字で「あか」という文字を読むなど、クライエントの症状に合わせて難易度を調整し、楽しみながら取り組めるよう、一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療が欠かせません。
「自分でやる」ということ
作業療法学では「これまでの人生で培ってきた行為は認知症になっても忘れない」と考えられています。部屋の場所を覚えられない方が、食器を洗う際、コップの裏側まで丁寧に洗っているという例もあります。作業療法士は、こうしたささいな行為を見逃さずに、ポジティブな声掛けを行います。人間にとって「自分でやる」ことは幸福感を得る上でとても大切です。コップを洗う、洗濯物を畳むなど、「これまでの人生で培ってきた行為」を自分でやってもらうことが、患者の自信の回復につながっていくのです。
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