水の浄化に深紫外LEDが活躍! そのさらなる意外な利用法とは
深紫外LEDで安全な水を
いま、世界の約7億8500万人がきれいな水にアクセスすることができず、汚れた水が原因でたくさんの人が命を落としています。そんな水の浄化の問題を解決しうるのが「深紫外LED」です。深紫外光とは波長が紫外線よりも短い300ナノメートル以下の深紫外線と呼ばれる光のことで、殺菌・消毒作用があります。現在、水銀灯を光源とした深紫外線が浄水場などで使われています。深紫外LEDは水銀灯よりも低い電圧で稼働でき、有害な水銀も含みません。太陽電池とリチウムイオン電池を組み合わせればどんな場所でも使えるので、インフラが整っていない地域でも水の浄化が可能です。すでに浄水用深紫外LEDの社会実装が始まっています。
深紫外LEDの意外な応用先
この浄水用深紫外LEDを、まったく違う分野へ応用する試みがあります。現在、携帯電話の第5世代移動通信システム(5G)への移行が進められていますが、その次の6Gという技術開発がすでに始まっています。無線通信に使う電波(マイクロ波)のチャンネルは5Gですべて使い尽くされているため、6Gでは物理的に新しい通信方式を採用しなければなりません。そこで注目されているのが深紫外LEDです。深紫外LEDには小さな発光点がたくさんあり、この特性のため一般的なLEDよりも速い、ナノ秒単位でオンオフすることができます。それを通信に利用するのです。
次世代通信技術をめざして
無線通信がうまくいくかどうかは、信号となる光の強さとノイズの低さの比率が重要です。太陽光に含まれる深紫外線はオゾン層にすべて吸収されるので、地上には届きません。すなわち、地球上では深紫外のノイズはほぼ0です。また、すでに浄水用に開発された深紫外LEDを応用できるので、コストを低く抑えることができます。
現在、1年間に地球を飛び交う情報量は4.8ゼタバイトだといわれています(ゼタはギガの1兆倍)。今後も増加を続ける無線通信量を担う日本発の次世代技術として、通信用深紫外LEDが期待されています。
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大阪大学 工学部 電子情報工学科 電気電子工学科目 教授 小島 一信 先生
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