新しい気体レーザーで、やさしい医療を
気体レーザーとは
レーザー技術はさまざまな分野で応用されています。レーザーには原理の違いによっていくつかの種類があります。気体に電圧をかけて放電させ光を取り出す気体レーザーもそのひとつで、中赤外や深紫外などの波長域の光を、高いエネルギーで出せることが特徴です。レーザー加工やレーザー医療の一般的な原理は、対象物にレーザー光が吸収されて、そのエネルギーで発生した熱で蒸発や融解が起こるというものです。気体レーザーの中でも、波長域が9~11マイクロメートルの「CO₂レーザー」は、ガラスや樹脂、水に吸収されるため、産業や医療で広く使われています。
CO₂レーザーの課題を克服
高エネルギーで簡単に物の加工ができるCO₂レーザーですが、発生する熱のコントロールが難しいという課題もあります。熱量が大きすぎると、加工する対象物にひび割れや炭化が起こります。また医療ではやけどになるため、麻酔やクールダウンの時間が必要です。そこで、レーザー光を放射する時間(パルス幅)を短くコントロールして、熱影響の少ないCO₂レーザーの研究が進められています。研究では、放電や電圧の制御のための電源設計から、すべてハンドメイドで開発が行われています。さらに、従来のCO₂レーザーは大型であるため、小型化にも取り組まれています。
ダメージの少ない医療レーザーを
歯のエナメル質の内側にある象牙質は有機物を多く含むため、従来のCO₂レーザーを使った治療では歯が黒く炭化してしまいます。これに対し、短パルスの新しいレーザーでは、歯の白さを残したまま、しかも低エネルギーで深く掘ることができます。同じく歯科医療のインプラントには十分なあごの骨の量が必要ですが、レーザーを当てると骨が再生されることが知られており、ここでも新しいレーザーでの効果が確認されました。また、アンチエイジングを目的とした肌へのレーザー治療についても、熱を制御してやけどを抑える研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 工学部 電気電子工学科 准教授 宇野 和行 先生
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