鉄道の課題解決に向けて、数式からアプローチする
エネルギーを抑えるか、速度を上げるか
鉄道の運行に欠かせないのは、電力です。そして鉄道会社は、できるだけ少ない電力で効率の良い輸送を求められています。走行速度を落とせば電力は抑えられますが、乗客の利便性を損ないます。しかし速度を上げれば上げるほど、使用電力は増大します。少ない電力エネルギーで効率の良い輸送を行うには、どうすればよいでしょうか。
時刻表は、実は5秒単位
走行中の坂やカーブ、加速や減速すべき場所、停車の際のブレーキをかけるタイミングなどすべてを考慮したうえで、数式によって、最適なスピードと電力エネルギーを導き出す研究が行われています。省電力と効率化の最適解が反映されるのが、時刻表です。いつもあなたが見ている電車の時刻表は、1分単位の表示ですが、実際は「9時8分25秒発」とか、「13時30分50秒に到着」など、5秒単位で定められた運行ダイヤに従って走行しています。5秒どころかたった1秒が、消費電力の大きな差となって表れるものであるため、「時はエネルギーなり」という言葉で言い表すことができます。
「最適」を数式で導き出す
地方には、電化されていない路線がまだ多く残っており、ディーゼルエンジンの車両が走っています。これを、クリーンな乗り物に置き換えるのに、バッテリー電池を積んで走る車両の実用化が進められています。限られた駅でしか充電できないため、どの駅に充電装置を置くか、どのタイミングで充電するか、バッテリー電池の大きさや重さも考えたうえで、数式によって充電装置の最適な配置を計算します。すでに現在、栃木県の烏山線を、蓄電池駆動電車システムを用いたEV-E301系電車が走っています。
エネルギー効率も輸送力も高い鉄道の課題が、輸送力の調整です。特に長距離路線では10両編成の列車が都心も田舎も走るなど、鉄道は乗客の増減に対する微調整ができません。この課題の最適解を導き出すことが、今後の鉄道発展のカギとなります。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
上智大学 理工学部 機能創造理工学科 教授 宮武 昌史 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
電気工学、制御工学、システム工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?