言語の「型」を生かした計算言語学
インドネシア語の特徴
インドネシア語はしばしば、「世界一学びやすい言語」だと言われます。理由は、文字がアルファベットで読み書きがしやすい、動詞の活用変化がない、音の高低で意味が変わる「声調」がないといった特徴によるものです。一方で、日本語話者にとってはなじみがなく、難しく感じられることもあります。そのひとつが単語の前後に付ける「接頭辞」と「接尾辞」によって品詞や意味が変わるという点でしょう。
接頭辞と接尾辞、さらに「繰り返し」で変化
例えば、動詞の「makan=食べる」に接尾辞「an」を付けると「makanan=食べ物」に、接頭辞「di」を付けると「dimakan=食べられる」に変化します。また、接頭辞「me」と接尾辞「i」を付けると「memakani=何度も食べる」となります。さらに「makan」を2度繰り返すと「makan-makan=大勢でにぎやかに食事する」になるのです。一見ややこしそうですが、規則性のある「型」を整理して覚えていくのが習得の近道でしょう。
計算言語学が翻訳ソフトの精度向上に
このような言語の「型」を生かした研究分野のひとつに、コンピュータを用いた「計算言語学」があります。言語の現象のサンプルをインターネット上で大量に集め、文法の構造を分析してモデル化したものを、コンピュータでプログラミングしていく研究です。集められるサンプルの質と量は、その言語の話者の数よりも、デジタル化が進んでいるかどうかに依存します。約2億7千万人の人口(話者)を擁するインドネシア語よりも、人口(話者)が1億2千万人ほどの日本語の方が、サンプルを集めやすいのです。
言語能力に加えて、「言語学」と「プログラミング」の知見が必要なため、極めて専門性が高い研究です。このプログラミングで構築された解析システムが機械翻訳ソフトに実装されることで、文法的により正確な翻訳が期待できます。
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先生情報 / 大学情報
神田外語大学 外国語学部 アジア言語学科 インドネシア語専攻 講師 ダヴィド ムルヤディ 先生
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