それは「進行」か「結果」か 言語によって異なる「アスペクト」の研究
「~している」の違い
日本語には「~している」という表現があります。例えば「今彼は本を読んでいる」の場合は「進行」を意味しますが、「ドアはもう閉まっている」の場合は「結果・状態」を表します。しかし英語では前者の場合は「be ~ing」、後者の場合は「have ~ed」と異なる表現をします。韓国語も英語と同様に「~している」は「進行」「結果・状態」によって区別して表現されます。さらに韓国語では「私は結婚している」が「私は結婚した」、「私は父に似ている」は「私は父に似た」(この場合は助詞も変化する)になるように、「結婚する」「似る」といった動詞は過去形でしか表現できません。
「しよる」と「しとる」
「~している」のように、物事が時間の流れによってどう展開していくのかを表す文法形式を「アスペクト」といいます。実は同じ日本語でも、「~している」を「進行」「結果・状態」によって使い分ける方言があります。中国地方以西、四国・九州を含む西日本地方では「~している」が「しよる」と「しとる」という言い方に分かれます。「ドアが閉まりよる」は、今まさに閉まろうとする「進行」を、「ドアが閉まっとる」の場合は完全に閉まった後の「結果・状態」を表します。これは東日本の人や標準語話者にはなかなか理解できない使い分けです。
アスペクト研究の意義
アスペクトの研究は、日本語と非常に近いとされる韓国語の研究においても重要な意味をもっています。韓国語のアスペクトは、動詞によってさまざまな変化を見せるため、研究では「Corpus(コーパス)」というデータベースを使って用例を抽出し、細かな変化を比較しながら韓国語の特徴的な言語現象を明らかにします。
韓国語は構造的に日本語に似ていることから、初・中級者は上達しやすい半面、上級者になるほど細かな違いが壁になりやすい側面があります。研究を通してアスペクトの多様な変化について知ることは、言語習得という点でも大きな意味を持っているのです。
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神田外語大学 外国語学部 アジア言語学科 韓国語専攻 教授 浜之上 幸 先生
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