廃棄植物も活用! ポリフェノールを使った安全性の高い光殺菌
ポリフェノールに光を当てて別の顔を引き出す
ポリフェノール類は、ほとんどの植物に含まれており、フェルラ酸、カテキンなど何千種類もあります。抗酸化作用があり健康に良いことが知られていますが、その一方で、周りのものを酸化させる酸化性物質を作り出すという、全く逆の顔も持っているものも存在します。
この性質に着目し、ポリフェノールに近紫外線、ブルーライトなど、人体への影響が少ない光を当てることで、酸化性物質の過度な生成に伴い酸化作用を高め、殺菌や静菌(菌の増殖を抑える)に利用しようという研究が行われています。
人体にも安全かつ効果の高い殺菌技術を研究
以前から、波長が230~280nmの深紫外線を照射する光殺菌はありますが、深紫外線は人体にも悪影響があります。近紫外線(320~400nm)やブルーライト(380~500nm)は、人体への影響は少ないものの殺菌効果が小さいため、ポリフェノールと組み合わせることで安全かつ効果的な殺菌技術とするべく、研究が進められています。例えば、フェルラ酸に近紫外線やブルーライトを当てると、水虫菌(白癬菌)を殺菌できることが明らかになっています。
また、ポリフェノール自体に毒性はなく、農業に利用しても作物の安全性に問題がありません。そこで、ポリフェノール類を土や水耕栽培の養液に混ぜ、太陽光や温室のLEDの光を当てることで、土壌や養液の殺菌・静菌をする方法も検討されています。
廃棄植物を生かした循環型の殺菌技術
ポリフェノールは、廃棄される農産物などのバイオマスから抽出することもできます。その一つ、植物の細胞壁の構成成分「リグニン」は、ポリフェノール類がたくさんつながってできている物質ですが、バイオマス研究でも利用価値が低いとされてきました。そこで、このリグニンを抽出して分解し、光殺菌の材料となるポリフェノールを取り出す研究も行われています。この技術が確立すれば、廃棄物を有効活用して人体にも環境にも優しい殺菌ができるのです。
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徳島大学 生物資源産業学部 生物資源産業学科 准教授 白井 昭博 先生
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