実はまだよくわかっていない、食品が体内で機能するメカニズム

体内で食品成分が機能する仕組みを知ろう
食品は複雑な多成分系であり、さまざまな化合物の集合体です。そのため、わたしたちの体に多様な効果をもたらすことが知られています。実際に、食品の中には、病気の予防や改善に効果があるといわれているものがたくさんあります。しかし、本当に効果があるのか、効果があったとして食品のどの成分なのか、また体の中でどのように作用しているのかについては、わからないことがまだまだ多くあります。それらの疑問が科学的に明らかになっていくことで、より効果的な食品の摂取につながることが期待されています。
シグナル分子としての脂肪酸と受容体
炭水化物、タンパク質、脂質は体の中でエネルギー源となる三大栄養素として知られています。中でも脂質の成分である脂肪酸は効率的な栄養素としての側面があるだけでなく、体の構成成分として働いていると考えられています。近年、脂肪酸の新たな役割として、脂肪酸には細胞に情報を伝達するシグナル分子としての機能があり、生体内には食品由来の脂肪酸を認識する受容体が見つかっています。この受容体を作れないように改変したマウスで実験を行ったところ、脂肪酸を与えても血糖値の低下や体重の減少がみられなかったため、脂肪酸の代謝性疾患への効果はこの受容体を介していることが確かめられたのです。現在では、受容体の発現する組織や細胞などを調べることで、より詳細なメカニズムの解明が進められています。
腸内細菌が作り出す代謝物にも注目
脂肪酸は、構成する炭素原子の数によって、長鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸、短鎖脂肪酸に分類されます。このうち短鎖脂肪酸は、人間が分解できない食物繊維から腸内細菌が作り出す脂肪酸で、健康に有益な効果があることがわかってきています。一方、腸内細菌の代謝物は短鎖脂肪酸だけではありません。分解する食品の種類や、共生する腸内細菌の個人差によって、産生される代謝物は多種多様です。これら未知の代謝物についても、結合する受容体や、体への作用についての研究が進められています。
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近畿大学 産業理工学部 生物環境化学科 准教授 北野 隆司 先生
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