微生物の知られざる能力を見つけだせ
キノコは微生物の仲間
肉眼では見ることができないような微小な生物全般を「微生物」と呼びます。微生物にはゾウリムシのような「原生動物」だけでなく、乳酸菌、納豆菌のような「細菌」、そしてカビや酵母、キノコなどの「菌類」なども含まれます。キノコは手のひらくらいの大きさのものもありますが、カビと同じ菌類の仲間で、糸状の構造体である菌糸を成長させて大きな本体を形成しているのです。キノコの多くは死んだ動植物を分解する性質があり、この性質を利用して食用キノコの栽培だけでなく、布地の漂白やガムの口臭予防成分として利用されています。
有効な菌を探せ
地球上には膨大な種類の菌類が存在し、名前がついて図鑑に載っているものはほんのごく一部です。私たちの家の周りにも、まだ知られていない菌類がたくさんあります。そんな菌類の個々の能力がさらに解明できれば、これらを地球の環境保全や産業・医療分野へもっと利用できるのではないでしょうか。そのためには、菌類を必要なときにいつでも研究できるように、いわゆる「図書館」のようなものが必要不可欠です。すなわち、各地で採集したキノコ・カビを純粋分離して菌株をつくり、「菌類ライブラリー」を構築することが非常に重要なのです。
松枯れ病を防除せよ
日本には静岡県の三保(みほ)の松原や京都府の天橋立(あまのはしだて)のような美しい松林があります。この松林を悩ませているのが「松枯れ病」です。この病気が広がると、景観が悪くなるだけでなく、防災上の危険性も高まりますし、松と共生関係にあるマツタケも生えなくなります。この病気の原因となるのはマツノザイセンチュウという全長1ミリにも満たない線虫です。線虫は松の中の菌類の菌糸を食べて育ちますが、実は逆に線虫を食べる菌類もいます。ここで「菌株ライブラリー」の登場です。菌株ライブラリーの中から線虫を食べる菌を新しく探すこと(スクリーニングといいます)によって、ほかにもより効果の強い菌が見つかり、これが松枯れ病を防除するカギになるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
玉川大学 農学部 生産農学科 准教授 石崎 孝之 先生
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