「ポリフェノール」は、なぜ体に良いのか?
ポリフェノールの作用機構は未解明
果物や野菜に含まれるポリフェノールは、約8000種以上もあります。単量体と多量体に大きく分けられ、ワインやチョコレート、ブドウ、リンゴなどに入っているポリフェノールの中心は多量体ポリフェノールです。それらが体に良いことはよく知られていますが、どのような作用機構(メカニズム)で体に良い影響を与えているのか?という最も重要なことが、実はまだまだ明らかになっていません。そこで、生化学的分析、組織学的分析、遺伝子解析、代謝物測定、腸内細菌叢(さいきんそう)解析などにより、その作用機構を解明するための研究が行われています。
ポリフェノールが腸内細菌叢に及ぼす影響
栄養素や機能性成分は、腸管で吸収されて体内を巡り、各種臓器に影響を及ぼすと説明できます。しかし、ポリフェノールは腸管での吸収率がほかの栄養素や成分に比べてとても少ないことから、この考え方では説明がつきません。一方、食物繊維も腸管で吸収されませんが、体内に良い菌を増やすことで体に大きな影響を及ぼします。そこで、ポリフェノールが腸内細菌にもたらす影響の研究が行われ、食物繊維と同様の結果が得られ始めました。例えば、リンゴ由来の多量体ポリフェノール(プロシアニジン類)が腸内細菌に与える影響の研究では、痩せている人に多い菌と、腸管を炎症から保護する粘膜をたくさん作る菌を増加させることがわかり、肥満抑制効果の機構が明らかになったのです。
健康長寿のための食生活の指針へ
近年、腸内細菌叢の状態は、肥満や糖尿病だけでなく、脳機能にも影響することが明らかになりました。そこでポリフェノールが腸内細菌叢に与える影響が脳機能に及ぼす作用の研究も始まっています。このような研究から、ポリフェノールの生体調節機能や疾病予防効果を明らかにすることは、健康長寿のための食生活の指針につながります。
さまざまな健康情報があふれる中で、科学的に検証した信頼性の高い知識を広めていくことも食品研究者の大切な役割です。
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先生情報 / 大学情報
福島大学 食農学類 准教授 升本 早枝子 先生
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