食べ合わせでお茶の健康効果は変わる?
お茶の生理作用
お茶に含まれるポリフェノールには、健康維持に貢献する生理作用があります。主に、体にダメージを与える活性酸素を消去する抗酸化作用や、脂質やコレステロールの小腸からの吸収を抑える血中脂質濃度の改善作用です。これらの作用は実験で明らかにされていますが、実際の生活ではお茶単品を飲むとは限らず、ほかの食べ物と一緒に摂取することもあります。それでも、実験と同様の効果は発揮できるのでしょうか。
ポリフェノールと食べ合わせ
ポリフェノールは不安定な物質で、ほかの物質が共存すると安定性が増すことがあります。つまり、そのような物質を含む食べ物と一緒に摂取することで安定して体内に入ることができるのです。例えば、酸性寄りの条件では比較的安定するため、紅茶の場合はレモンを入れてpH値を下げると安定します。
しかし、ほかの物質とくっつくことで安定したポリフェノールが体内に入った後に、物質から離れて吸収され、作用するのかは、まだ解明されていません。生理作用を調べるには複数の実験方法が存在しており、それぞれに違う結果が出てしまうからです。研究を進めるには、まずどのような実験方法が適切かを考える必要があります。例えば、脂質やコレステロールの吸収を抑制する作用については、小腸内の条件がpH7付近であることがわかっているので、この条件下でどんな効果を示すかを追究することは重要です。
植物食材の力を引き出す
また実験用の純粋なポリフェノールは非常に希少であるため、ポリフェノール自体をつくり出す工夫も必要になります。緑茶のカテキンは植物中の特定の酵素と混ぜると酸化して紅茶のポリフェノールに変わることから、試験管の中でうまく酵素反応を起こして実験用の紅茶ポリフェノールをつくり出しています。
将来、人口増加や気候変動による食糧不足が予想されるため、植物食材が持っているパワーを最大限に活用することが求められます。そのためには実験室での研究だけでなく、生活の場で活用できる情報を提供していく必要があります。
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日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 食品科学科 准教授 奈良井 朝子 先生
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