高強度レーザーで新しいナノ材料をつくり出す!
金属は分子の構造やサイズで特性が変化する
あなたの身の回りにあるパソコンやスマートフォンなどの電子機器、テレビや冷蔵庫などの家電には、さまざまな種類の金属材料が用いられています。金属は複数の異なる素材を混ぜ合わせると特性が変化するため、用途に合わせてさまざまな性質の合金が用いられています。また、金属材料はサイズや形状を変えることでも新たな特性を発揮します。2010年には、炭素でできた原子ひとつ分の厚みしかない「グラフェン」というシートの製法がノーベル物理学賞を受賞しました。グラフェンはあらゆる物質の中でもっとも速い電子の移動速度を持ち、丈夫で電気をよく通す特性から、タッチパネルや太陽電池などに応用されています。
金属材料をレーザーで粉砕する
この「二次元ナノ材料」の研究は世界中で進んでいて、さまざまな方法が試されています。例えば、金属の素材を水中で特殊なレーザーを当てると、ナノサイズ(10億分の1メートル)にまで粉砕できます。すると、元の素材とは異なる性質を持った新たなナノ化材料を合成できるのです。そして、このナノ化した材料を組み合わせることで、液晶ディスプレイや半導体などさまざまな応用が可能です。液晶ディスプレイであれば、従来よりも鮮明な表示を可能にし、省電力で製造コストを大幅に下げることもできると考えられています。
材料から新たな材料を創造する
金属材料のナノ化にレーザーを用いる利点として、他の方法と比べて合成コストが圧倒的に低いことが挙げられます。合成に必要な機材が少なく、合成するサイズにもよりますが10~20分ほどで作業が完了します。また、水中でレーザーを照射するのは粉砕の過程で不要なガスを発生させないためですが、このガスにも新たな燃料としての可能性があるのではないかと考えられています。このようにレーザー照射による金属材料のナノ化には多くの可能性があり、未来のエネルギー問題を解決する一つの糸口として期待が高まっています。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 光システムコース 准教授 コインカー パンカジ マドウカー 先生
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