日本だけでは語り尽くせない 日本美術の海外とのつながりを探る
日本美術は派手だった?
一世紀以上前の西洋における日本美術のイメージは、現代とは少し異なっていました。現代では日本の美とは簡素に洗練されたものとしてのイメージが強いです。しかし19世紀後期は、超絶技巧と呼べるような、カラフルで装飾が派手なものが多く輸出され、絢爛豪華な作品も人気を集めました。その一方で、浮世版画のように現代でも日本美術のイメージとして根強いものも注目されました。
逆輸入された日本のイメージ
浮世絵は大衆文化だったために、日本国内では価値の高い美術品だとは思われていませんでした。しかし、西洋で印象派などの画家たちが浮世絵を意識した絵を描くようになり、ジャポニズムが花開くと、日本はそのイメージを自らの自己像として逆輸入したのです。海外から日本がどう見られているのかに注目し、他者が好んだ自国の文化を発信しはじめ、外交にも日本美術を役立てました。
さらに19世紀の終わりになると、万国博覧会などでの展示を通して、「海外が抱いた日本のイメージ」を反復するだけではなく、「海外のイメージとは違う日本の姿」も紹介していきます。その甲斐もあって、海外に発信される日本美術の姿は多様化していったのです。
複数の国から日本美術を探る
従来の美術史は、日本美術であれば「日本という国中でおきた文化現象」であったりと、国家単位の歴史として語られてきました。しかし近代であればジャポニズムのように、国内だけでは把握できない事例が出てきます。また、日本出身のアーティストには欧米の各地を視察し、その地の同時代美術を学び、主に海外で活躍した人も少なくありません。日本画のような伝統的と見なされている分野にも、国境を越えた近代性や、異文化を意識した視点が入っているといえます。グローバルな視点から日本美術を見直していけば、新たな発見につながるでしょう。
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上智大学 国際教養学部 国際教養学科 教授 村井 則子 先生
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