ナイジェリアの高血圧患者をデザインの力で支援する
ナイジェリアの死因1位は高血圧
アフリカのナイジェリアでは、高血圧による死亡率が先進諸国の約2倍で、成人の約半数が高血圧に関連する病気によって亡くなっています。現地調査によって、ナイジェリアの中間所得層の人々にとっては、高血圧の継続的な治療を受けることが難しいということがわかりました。この問題に対して、「デザイン」という観点から解決を図ろうとするプロジェクトが行われました。
デザインに至るまでの文化や価値観の把握
「デザイン」を行うには、その前の段階で、どんな価値観の人々が、どんな目的で、どんな状況で利用するものかをきちんと理解することが必要です。そのために、対象となる人々の文化、生活、習慣、価値観を理解するためのリサーチを行います。リサーチにはさまざまな手法がありますが、ナイジェリアの例では、「コラージュ」が採用されました。1日の流れの中で、高血圧の治療に関する出来事や感情の起伏を、単語と画像を切り貼り(コラージュ)することで表現してもらうという手法です。この調査方法を行うことで、短い時間で、人々の無意識的な価値観や生活の送り方、課題などを理解し、深く共感することができるのです。
「知らない文化」を理解して
ナイジェリアの調査では、「交通が不便なために病院へ行くのに時間がかかる」「病院も混んでいてなかなか診察が受けられない」「英語が理解できないために医師とコミュニケーションをとれず薬を誤飲してしまう」などが高血圧の治療を続けられない原因とわかりました。そこから人々にどんなものが必要なのかが構想され、最終的に安価だけれど正確性が高く使いやすい血圧計と、リモートで医師の診察と処方を受けるためのアプリケーションが開発されました。
ほかの文化を知るという場合、その対象は、他国や他民族とは限りません。例えばオフィスや役所での仕事の電子化の支援、高齢者の生活の支援など、問題解決の機会を探るデザインには、ある場所のある人々を自分の「知らない文化」として、理解する努力が求められるということです。
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先生情報 / 大学情報
武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科 准教授 北崎 允子 先生
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