DNAやRNAを狙いうち! 近未来型創薬「核酸医薬」
従来型医薬品の標的はタンパク質
薬局で買える薬や処方される薬など、私たちはさまざまな形で薬を治療に使っています。日本の医療用医薬品は約2万品目といわれていますが、現在使われている医薬品の多くは分子量500以下の「低分子医薬品」です。低分子医薬品は病気を引き起こすタンパク質を標的として鍵と鍵穴のような関係で結合し、タンパク質の機能を阻害して作用します。化学反応で製造できるので安価ですが、新たな「ぴったり鍵穴にあう鍵(薬)」を探し出すことが難しくなっています。
DNAやRNAを狙え!
人間の体を形成する約60兆個の各細胞には、遺伝子の本体であるDNAが入っています。DNAの塩基配列情報がRNAに転写され、次に体の組織を形成するタンパク質に翻訳される流れをセントラルドグマといいます。病気の原因となる遺伝子から最終的に作られた悪いタンパク質の働きを止めるのではなく、上流であるDNAやRNAを標的にして悪い遺伝子を分解できれば、効率的に悪いタンパク質の生成を防げます。そこで、DNAやRNAと同じ核酸分子をうまく使い、病気の人の遺伝子配列のみを標的にして病気を治療する「核酸医薬」が注目されています。
安定性の高い人工核酸の開発がカギ
DNAやRNAの塩基には必ず決まった相手と対になるという性質があります。核酸医薬はこれを利用して、病気の原因となる特定の塩基配列にぴったりマッチする核酸分子を作り、悪い遺伝子だけをブロック、あるいは分解しようとするものです。核酸医薬はDNAやRNA、タンパク質など生体内に存在するほとんどの分子を標的にできるため、難治性疾患の特効薬開発も夢ではありません。
しかし、天然の核酸分子は非常に不安定なので、有機化学の力で人工的に疑似核酸を合成し、分子の安定性を高めることが課題です。狙ったDNAやRNA分子を確実にとらえ高い結合性を有する人工核酸の研究開発が、近未来の薬である「核酸医薬」の重要な鍵となります。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 薬学部 教授 南川 典昭 先生
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