地域の文脈を読み解き、デザインする

地域の文脈を読み解き、デザインする

「地域の文脈」とは?

街を形づくっているのは、道路や建物だけではありません。その土地の地形や自然、歴史的背景や文化、人々の生活など、さまざまな要素が関わり合って、その土地独特の街並みやたたずまいが形成されています。都市計画や環境デザインでは、それを「地域の文脈」として読み解き、街のデザインにどう反映していくかが重要視されます。
文脈を読み解くポイントは大きく4つあります。1つ目は自然・文化・歴史・制度といったその土地の背景、2つ目は道路や交通などのインフラ、3つ目は住宅やビルなどの建物、4つ目は生活様式や文化です。

さまざまな要素の関係性を都市計画に反映

もし都市計画に文脈を読み解く視点がなければ、地域景観の統一感やストーリー性、機能性が失われてしまい、そこで暮らす人々の生活に大きな影響を与えてしまいます。
例えばビルを建てるとしても、東京の都心の高層ビル街なのか、京都の伝統的な日本家屋が並ぶ住宅街なのかで、ビルの存在が周辺に与える影響が異なります。またその街の街路や建物デザインなど空間構成がどうなっているか、商業地区なのか住宅地なのかなどの機能の視点なども重要なポイントです。

文脈を街のデザインに組み込む6つの手段

実際に読み解いた文脈にデザインを介入させるには主に6つの手段が挙げられます。1つ目は「保存」で、今ある建物を修繕して活用することです。2つ目は「対比」で、古い建物に新しいデザインを融合させることです。3つ目は「転換」で、例えば古民家をリノベーションしてカフェにするなどです。4つ目は「刷新」で、まったく新しくスクラップ&ビルドすることです。5つ目は「凝縮」で、その土地の歴史や文化のモチーフを生かして新たなランドマークなどを作る方法です。そして最後は「漸(ぜん)進」で、旧市街地を段階的に改善する手段です。
地域の文脈を読み解き、キーワードを「見える化」して街のデザインに生かすことで、より美しく豊かで個性的な都市環境が生まれるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

金沢大学 人間社会学域 地域創造学類 講師 白石 英巨 先生

金沢大学 人間社会学域 地域創造学類 講師 白石 英巨 先生

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建築学、都市計画学、建築計画学

メッセージ

都市デザインは、今あなたが暮らしている街の中にあります。普段見ている建物や街並み、歴史や文化に目を向ければ、そこには地域の文脈が隠れています。街を見ることを意識して、何か面白さや疑問を感じたらそれを掘り下げてみてください。そして、さまざまな地域に感動してください。教育によって知識は蓄えられますが、感覚や感動は与えられるものではありません。今は動画などで海外の街並みを見ることもできるので、たくさんの街を見てください。そして、都市のデザインに興味が湧いたら、ぜひ学んでみてください。

金沢大学に関心を持ったあなたは

金沢大学は150年以上の歴史と伝統を誇る総合大学であり、日本海側にある基幹大学として我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してきました。本学が位置する金沢市は、日常生活にも伝統文化が息づき、兼六園などの自然環境に恵まれ、学生が思索し学ぶに相応しい学都です。江戸時代から天下の書府とも呼ばれ、伝統の中に革新を織り交ぜて発展してきた創造都市とも言えます。「創造なき伝統は空虚」との警句を胸に刻み、地域はもとより幅広く国内外から来た意欲あるみなさんが新生・金沢大学への扉を共に開くことを期待しています。