電気自動車から医療・環境まで 暮らしを変える高分子の可能性

電気自動車から医療・環境まで 暮らしを変える高分子の可能性

身のまわりで活躍する高分子

分子は複数の原子が結合することによってできていますが、特に数千から数十万という数の原子からできている分子を、高分子(ポリマー)と呼んでいます。高分子は、合成繊維やプラスチックに代表されるように、軽くて丈夫、さまざまな形に加工できるのが特長で、多くの製品の材料・素材として、身のまわりで幅広く利用されています。現在も、常に新しい高分子が研究開発されていますが、社会の役に立つ機能性高分子をどのように作り出すのかが課題となっています。

電気自動車の電池に、手術の接着剤に

例えば、ハイブリッドカーや電気自動車などに使用されているリチウムイオン電池は、内部の電解質に可燃性の液体が使用されており、液漏れすると発火しやすいという問題があります。それを解決するために高分子を使用する研究が進められています。原子が網目状に結合したネットワークポリマーで電解質を含む可燃性液体を包み込んで液漏れを防ぐことができます。また、可燃性液体の代わりに安全な固体高分子を使用する方法もあります。
納豆の粘り成分とムール貝の接着成分から接着性の強い高分子に関する研究もあります。これらの物質は生体適合材料といって、人間の体に適合しやすい性質をもっています。手術の際の接着剤として、素早い治療を行わなければならない場合や、糸による縫合が難しい箇所などに安全に使用できます。

環境に配慮した高分子

環境に配慮した高分子として、CO₂を使って高分子を合成するという試みもなされています。接着剤やコーティング剤として使用されているエポキシ樹脂は、自然界で分解されにくい性質を持ちます。これをCO₂と反応させると分解されやすいカーボナート樹脂に変換でき、環境負荷の少ない材料として利用できます。ただし、生体接着剤については接着性と生体適合性の両立が難しい、カーボナートは分解性を高めると安定性が低くなるなどそれぞれに課題があり、課題の解決や新しい物質合成に向けた研究が続けられています。

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先生情報 / 大学情報

近畿大学 産業理工学部 生物環境化学科 教授 松本 幸三 先生

近畿大学 産業理工学部 生物環境化学科 教授 松本 幸三 先生

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高分子化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の研究では、新しい高分子を設計して合成し、その機能を調べます。新しい高分子が世の中の役に立つ、地球環境の役に立つ、人々の暮らしに役に立つことをめざして研究を進めています。
現在、プラスチックをはじめとする高分子が悪者扱いされている側面がありますが、あなたには、実際に高分子がどういうものなのか、何が問題になっているのかをよく勉強して、改善のための対策を考えてほしいと思います。高分子には社会を変える力があります。持続可能な社会の実現のために高分子について、きちんと勉強することが大切です。

先生への質問

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近畿大学は西日本に6つのキャンパスを持ち、15学部49学科を有する西日本最大の総合大学です。常に未来を志向し、「実学精神」を教育の柱としています。世界で初めて成功した「クロマグロの完全養殖」やブタにほうれんそうの遺伝子を組み込んだ「ホウレンソウブタ」など、ユニークで世界レベルの研究成果には大きな注目が寄せられています。
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