人に優しいシステム工学を、福祉の現場に
システム工学と福祉分野が融合すると
目的に合わせて機器など複数の要素を効率的・合理的に組み合わせ、全体として最適化していく考え方は、身近な組織から巨大なプロジェクトまで応用され、進化しています。これらを工学的手法でアプローチしていく学問領域を、システム工学と言います。工学上のさまざまな技術が適用される、非常に幅広く総合的な学問です。例えば、情報システムと介護福祉分野が結びつくと、介護現場などでのIoT(モノのインターネット)化によって、サービス利用者のメリットはもちろん、人手不足を補い、安全性を高めることができます。
介護現場でのセンサーを生かしたIoT開発
そのシステムの一例として、リモートセンシング技術を使い、介護施設で利用者の安全を見守る仕組みがあります。市販の手のひらサイズのPCにセンサーを取りつけ、利用者の部屋などに設置します。カメラで常に監視するのではなく、温度センサーなどを用いて利用者が床に倒れていることを検知して、その情報を管理者へLINEで送るといったことができます。利用者の安全と介護スタッフの人手不足を補うという目的を達成することのできる仕組みでしょう。特に夜間などに起きやすい転倒事故を発見しやすく、命を救うことにもつながります。安価であることも、広く使ってもらうには重要です。
利用者一人ひとりへの細やかな対応
福祉の世界では、代表的な使用器具である車椅子ひとつとっても、利用者の状態によって必要とされる機能が異なります。単に足が不自由というだけではなく、手の力も弱い場合や、片手だけに力が入らない場合もあるからです。制御工学を使えば、手の力の左右のバランスが悪くてもまっすぐ目的の方向へ進めるような車椅子を作ることもできます。車椅子のようなハードウエアだけでなく、利用者のケアプランの作成をAIで支援するシステムなどのソフトウエアでも福祉に貢献できます。
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日本福祉大学 健康科学部 福祉工学科 教授 大場 和久 先生
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