世界の課題「安全な水へのアクセス」を、工学の手法や技術で支える
世界の水問題
世界には、安全な水にアクセスすることができない人が、約9億人おり、これを原因とする疾病などで、毎日5000~6000人の子どもが亡くなっています。これは世界共通の課題として、国連などを通じてさまざまな活動が進められていますが、安全な水へのアクセスを可能にするためには、その水がどの程度危ないもので、どれくらいの管理をすればいいのかを定量的に示した上で議論をしなければなりません。
日本の安全な水とリスク
例えば、身近な川の水をそのままコップ一杯飲んだらどうなるでしょう。都市を流れる川の場合、100人中3~4人が下痢や腹痛を起こすでしょう。川の水には、細菌やウイルス、原生動物がいるからです。ですから、浄水場で安全に飲める水に処理しているのです。
浄水工程では、最後に微生物対策で塩素消毒をしますが、同時に微生物以外の有機物などと塩素が反応して副生成物もできてしまいます。その代表格が、トリハロメタンです。トリハロメタンには発がん性が指摘されていますが、だからといって、その元凶となる塩素消毒をいたずらに怖がるのは間違いです。水道水には、発がんリスクに関しては、10万人に1人以下、微生物感染では年間1万人に1人以下という安全上の基準が設けられているのです。
定量的な議論に基づいて必要な技術の導入を
世界の国や地域で安全な水を提供するために、どのような水システムを構築していくかを検討する場合も、必要な制御を数値で定量的に示し、具体的な除去率を把握することではじめて、どのような技術や設備を導入したらいいかを選択できます。やみくもに井戸を掘るとか、実情にそぐわない高級な設備を入れるのではなく、その国や地域に合った、必要でかつじゅうぶんなものを入れる必要があります。その議論のためのデータや数値を客観的に示すという役割を環境・衛生工学は担っているのです。
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先生情報 / 大学情報
京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 伊藤 禎彦 先生
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