具体的機能と抽象的構造の関係を数理的に解析する!
数学と数理科学の違い
「数学」は計算によって問題に解答することが求められます。一方「数理科学」は世の中の事物を解析し、結果を解釈し、他の人に説明して納得するための合理的精神そのものです。例えば、不思議な機能を持つ生命体について、より精密に理解するため、数理的な構造を探ることも可能です。数理的な構造というものは抽象的なものですが、大学で数理科学の訓練を積めば、誰でも理解し、使いこなせるようになります。様々な事物の「(具体的)機能」と「(抽象的)構造」の関係を数理解析する仕事は、興味深くてやり甲斐のあるものです。
生命の不思議を数理科学として数理解析する
シアノバクテリアという単細胞の生命体には、「概日周期」と呼ばれる一日、24時間を、細胞一つ一つのレベルで「今何時、今何時」と覚えているという機能があります。kaiA、kaiB、kaiCという3種類の時計遺伝子でコードされた時計タンパクが作るシステムが時刻を記憶する役目を担っています。決定論的、および、確率論的な力学系の立場から、概日周期の数理的な構造を探究し、それを数理解析して解釈できます。このような一見、不思議なシステムとしての生命の機能などでも、数理科学の訓練を積み、それらを数理解析すれば、高校生でも機能と構造の関係に気が付いて行きます。
文明を支えた数理科学
「同じ方法を使えば誰もが同じ結論にたどり着く」という数理科学の特徴は、人間の文明を支えてきました。例えば古代エジプトでのように、土地の広さを理解し、説明するのも数理科学的な数理解析と言えます。エジプトの人々はナイル川の氾濫で土地が川底に沈むと、権力者から代わりの土地をもらっていました。しかし新たな土地が元の所有地より狭ければ納得できません。たいていの土地は境界や形状が曲がっていたりゆがんでいたりするため、見た目で判断することは困難です。そこで権力者が求めたのが数理科学でした。そもそも面積とは何か?それはどう定義するべきか? そのような根源に立ち戻って考える態度が数理科学です。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 数学科 准教授 大西 勇 先生
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数理科学、機能と構造の数理解析学先生が目指すSDGs
先生への質問
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