講義No.14105 数学 教育

「算数嫌い」をなくす授業を考えてみると?

「算数嫌い」をなくす授業を考えてみると?

数学は何の役に立つの?

「数学って何の役に立つの?」という言葉をよく聞きますが、生活のあらゆるところに数学を見つけることができます。例えば、スーパーでミカン4個が1つのトレイ皿に載せられて(4個/皿)、それが5皿あったら、「4個/皿×5皿」で合計20個あるとわかります。「4個/皿」という状況を理解できれば、1個ずつ数えなくてもトレイの数が分かればいいのです。このかけ算は、速さの計算に発展します。時速4km(4km/h)で5時間歩くと、距離は「4 km/h×5h」で20kmと分かります。どちらも同じ構造です。数学は「構造の学問」であり、シンプルな構造を深め発展させていく面白さがあります。

算数嫌いの理由は?

それでも、算数・数学嫌いの子どもが一定数います。多くの授業では例題の解法を暗記して、問題を反復練習しますが、現実から切り離された問題を解くだけでは、面白さを感じにくいのです。
そこで小学校では、数学への入り口として現実から算数を見つける授業の工夫をします。例えば、プラレールやミニ四駆などを教室に持ち込んで、速さを比べをします。「速さを比べるには何を調べたらいいか」を話し合うと、「速いものは早く着くから、時間を調べる」という意見が出ます。でも「時間は距離によって変わる」→「つまり時間と距離を調べたらいい」と自分たちで気づき、距離を時間で割って比べる計算を発見します。最後に実際に確かめると、「やった!」「計算通りだ!」という体験ができ、生きた知識となるのです。

求められる「楽しく体験する授業」

速さを調べるなら、「はじきの公式」を使えば簡単に答えが出るという意見もあるでしょう。しかし解き方を習うだけではなく、自分で「どうやって速さを表したらいいか」を体験を通して順序立ててみんなで楽しく考えていくことで、そのエピソードと共に知識が深まり、定着しやすくなるのです。テストの点数を上げることも大切ですが、まずは算数や授業を楽しく体験し、好きになってもらう工夫が教育の場に求められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

日本福祉大学 教育・心理学部 学校教育学科 教授 板垣 賢二 先生

日本福祉大学 教育・心理学部 学校教育学科 教授 板垣 賢二 先生

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数学教育学、教育学

メッセージ

日本の子どもの数学能力は国際的にもとても高いのに、数学嫌いな人がいるのは、その人が悪いのではなく、出会い方が悪かったのだと思います。数学は楽しいもので、身近な生活のさまざまな場面で数学の法則を見つけられます。もし、教員をめざすなら、まず例えば「かけ算は何が面白いのか」と考え、数学のおもしろさを探してみるとよいでしょう。また教員をめざさなくても、教育学を学ぶことには意義があります。相手に何を伝えて、どう楽しんでもらうかを学ぶ教育学は、人と関わるどんな仕事にも役立ちます。

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