会話が弾んでいるとき、あなたの脳の活動は相手と同調している
コミュニケーションの質を客観的に評価
コミュニケーションの最中に、相手と「息が合っている」と感じるとき、実は脳の活動も「合って」います。コミュニケーションの参加者の脳の活動や体の動きを測定し、同調している度合いを調べることで、参加者の感じ方を客観的に読み取る研究が行われています。参加者同士が一体化し集中できているという感覚を、同調という客観的なデータで評価できれば、コミュニケーションの質の向上が図れます。特に教育現場では、グループ学習などにおいて生徒が集中しやすいグループ編成にするなど、授業の改善に役立ちます。
脳や体の動きの測定方法
脳の活動の測定には「NIRS(ニルス)」という装置を使います。これは生体を透過しやすい近赤外線を頭に当て、脳の血流の変化を測定するものです。活動している脳の部位は血流が増加するため、どの部位がどのタイミングで活動しているかがわかります。体の揺れや発話などは、スマートフォンを首から下げてモニタリングします。
一方、ビデオ会議のような遠隔コミュニケーションではこれらの方法は使えません。そこで、表情や声の特徴、発話のタイミング、さらにはまばたきや目の動き、瞳孔の大きさの変化も同調の度合いを測るデータとして利用されつつあります。これらのデータと、アンケートなどで得られる参加者の主観的な体験とを照らし合わせて、関係性を評価します。
同調の度合いをリアルタイムでフィードバック
同調の測定結果から得られた評価を、リアルタイムでコミュニケーションの参加者にフィードバックする研究も進められています。例えば、現在教育現場で使われている学校アンケートは、学期の半分が終わった時点でアンケートを取って評価し、残りの半学期に生かすというものなので、授業の改善には数カ月かかります。しかしコミュニケーションの質をリアルタイムでフィードバックできるようになれば、その都度検証や試行錯誤ができるので、スピーディな改善が期待できます。
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富山大学 工学部 工学科 知能情報工学コース 教授 野澤 孝之 先生
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