ヒトと協働できるパートナー! ウマとの関係の源を探る
ヒトを理解する社会的認知能力
ウマは古くからヒトと協働し、ヒト社会で活躍してきました。ウマがヒトと深い信頼関係を築けるのは、ヒトの感情や状態を理解できる「社会的認知能力」を持っているからだと考えられます。この能力を確かめるために、ヒトとウマが関わる場面を設定した実験が行われました。まず、複数のバケツの一つに餌が隠される様子を見る・見ない二人のヒトがいて、ウマにはこの二人の様子は見えても餌が隠される様子は見えない状況をつくりました。その後、二人がバケツを一つずつ指差して、ウマにどちらかのバケツ選ばせます。すると、ウマは餌が隠された様子を見ていたヒトが指さしたバケツを選び出しました。このことから、ウマは「見たということは知っている」と理解できること、また「指差し」をヒトからのコミュニケーションとして認識できることが明らかになりました。
多くの他者と関わり、社会を形成する
野生下のウマについても、海外でドローンを用いた行動観察が行われました。ウマの「ハレム群」は、主に1頭のオスと複数のメスや子どもで構成されます。群れ内では、さまざまな個体間で優劣や親密度が異なり、これら社会関係の違いは個体間のやり取りに影響を与えることが分かってきました。このような社会関係は他の群れとの間でも見られ、群れ内だけでなく群れ間でも互いに活動を同期させることも分かりました。ウマたちは複数の他者と関わり合い、社会を形成しているのです。
ウマの特性とヒトへの影響
ウマは他者への理解能力や同調性が高いことが分かってきました。このような特性は、ヒトとウマの関わりでも見られ、これがヒトとウマとの関係の土台となっていると考えられます。近年は動物介在介入(アニマルセラピー)分野において、ウマの活用が注目されています。ウマとの関わりや乗馬は、ヒトの心や体の状態を向上させる効果があるといわれています。この効果はどのようなメカニズムから生じるのでしょうか? ヒトとウマがより良い関係を築いていくためにも、さらなる研究が期待されます。
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先生情報 / 大学情報
帝京科学大学 生命環境学部 アニマルサイエンス学科 講師 リングホーファー 萌奈美 先生
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