感受性が高いって、良い・悪い? 心の発達を解き明かす

感受性が高いって、良い・悪い? 心の発達を解き明かす

環境から受ける影響は人それぞれ

新しい学校環境で、児童・生徒は場合によっては「なじめない」と感じたり、成績が下がったり、不安が高まったりすることがあります。心の発達は、その人が遺伝的に持っている特徴からだけでなく、「どういう環境で過ごすか」ということからも影響を受けます。同じ学校環境になっても、兄弟で同じ家庭で育っていても、環境から影響の受けやすい子もいれば、そうでもない子もいます。その個人差を「環境感受性」と言います。

心と環境の関係、どうやって調べる?

環境感受性は、「生活に変化があると混乱する?」「服の生地の肌ざわりで不快になる?」「食べ物の味に敏感?」など、さまざまな刺激に関する質問項目を使って測ることができます。思春期の子どもの心の発達を見るには、この環境感受性を軸に、「学校環境の質を測る尺度」と「心の問題を測る尺度」とを合わせてアンケート調査を行い、分析します。「学校環境の質を測る尺度」とは、例えば宿題の量、友達や先生との関係などで、「心の問題を測る尺度」とは、不眠などのうつ症状や不安といったことです。特定の子どもたちを1年に1回、3年間にわたって調査するなど、縦断的に複数回、同じ人に同じ項目を調査することで、発達における変化を見ていきます。

「個人差データ」からわかること

繊細で感受性の高い子どもは、新しい学校環境に飛び込む時にリスクを負いやすいなど、メンタルヘルスや発達において「感受性の高さ」はこれまでネガティブな特性としてとらえられてきました。しかし実際に個々のデータを取ってみると、感受性の高い子どもほど、良い学校環境からは良い影響を受けやすいこともわかりました。つまり、感受性自体に良い悪いはなく、置かれた環境によって良い方にも悪い方にも働くことが明らかになったのです。このように個人差をデータとして示していくことは、一人一人に違いがあることを理解できるだけでなく、適切な心の発達の見方を促すことにもつながるのです。

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先生情報 / 大学情報

創価大学 教育学部 心理・教育学科 講師 飯村 周平 先生

創価大学教育学部 心理・教育学科 講師飯村 周平 先生

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メッセージ

私は高校生の頃、教師になろうと進学校に通っていましたが、途中から家庭の事情で行けなくなりました。危機感から定時制高校への転校を決めて、アルバイトをしながら大学をめざしました。定時制高校ではさまざまな事情を抱える人たちに出会い、話す中で「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」と感じ、その心境の変化に「心」の不思議さや面白さを感じて心理学を始めました。心理学は、自分が生きやすくなる手がかりにもなる学問です。生き方を悩んだ時にも役に立つかもしれません。

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創立以来、学生と教職員が大学を創る者として、互いに対話、研鑽を重ねながら大学の価値を高めてきました。こうした教育・研究および社会貢献の成果は、文部科学省のGP(Good Practice)採択など、外部からの高い評価となり、普遍的な価値として、現代の大学教育に大きな示唆を与えています。また国際化が叫ばれる中、69カ国・地域、260大学との交流協定は、真の国際人養成に大いに貢献できることでしょう。